5G(第5世代移動通信システム)開発をけん引している米クアルコム(Qualcomm)が長年続けている特許ライセンス方法を違法とする判決が下った。同社は控訴中だが確定すると、スマートフォンなど無線機器のライセンス料が大幅に下がる可能性がある。米中貿易摩擦を背景に米政権が特許権者の権利を強化しようとする動きが見られる中、裁判所は「法の正義」を貫いた。知財経営の専門家が解説する。今回は第2回。 (日経 xTECH/日経エレクトロニクス)

(第1回の記事はこちら

 FTCの第2の主張であるQualcommによる半導体メーカーに対する特許ライセンス拒否について、裁判所は多数の事例を認定した(表1、同pp.114-124)。同社のその事業戦略は、モデムチップ・ビジネスに関して取引制限、参入阻止、外販阻止、参入 遅延、撤退促進といった絶大な市場閉鎖効果をもたらした。

表1 Qualcommによる半導体メーカーに対する特許ライセンス拒否の事例
(表: 判決理由書pp.114-124の記載から筆者作成)
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 裁判所は、同社が競合半導体メーカーに標準必須特許のライセンスを許諾しないのはFRAND誓約違反である旨の略式判決を2018年11月6日付けで下した (同pp.125-126、Fed. Trade Comm’n v. Qualcomm, 2018 WL 5848999, at 7.)。

 同社が参加している米国の標準化団体である米TIA(Telecommunications Industry Association)とATIS(Alliance for Telecommunications Industry Solutions)では、それぞれが規定するIPRポリシーにおいて、標準必須特許保有メンバーは保有する標準必須特許を有償でライセンスすることを選択した場合、あらゆる実施者に対して合理的かつ非差別的なRAND(reasonable and non-discriminatory、「FRAND」と同義で米国に拠点を持つ標準化団体では「RAND」の表記が一般的) と呼ぶ条件でのライセンスを求めている。

 この略式判決裁判では、これらの標準化団体のIPRポリシーに基づいて同社が競合半導体メーカーに標準必須特許ライセンスを許諾する義務があるかどうかが争点となった。

 第9巡回区控訴裁判所は2012年に「マイクロソフト対モトローラ控訴審」(Microsoft Corp. v. Motorola Inc., 696 F.3d 872、876(9th Cir. 2012))で「標準化団体は標準必須特許の保有メンバーがその特許をFRAND条件であらゆる利用者にライセンスする必要がある」と判示するとともに、2015年に同じくマイクロソフト対モトローラ控訴審(Microsoft Corp. v. Motorola Inc., 795 F.3d 1024、1031(9th Cir. 2015))で「標準必須特許保有者はRAND料率の支払いを約束する製造業者に対してライセンスを拒絶することはできない」と判示している。

 サンノゼ裁判ではこれらの判例に沿い、Qualcommは競合半導体メーカーに標準必須特許ライセンスを許諾する義務があるとの判決を下した。

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