運用直後は、目標地点との位置誤差は「1mぐらい」と見積もられていた宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」の2回目のタッチダウン(2019年7月11日、本連載の第1回参照)――。だが、その後に送られてきたデータの詳細な解析によって、さらに高い位置精度でのタッチダウンだったことが、2019年7月25日の記者説明会で明らかになった。その誤差は60cm(図1、動画)。1回目のタッチダウン(2019年2月22日)と比べて誤差を約4割も縮小した高精度着陸だった(本連載の最終回参照)。

図1 誤差はわずか60cmだった2回目のタッチダウン
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図1 誤差はわずか60cmだった2回目のタッチダウン
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図1 誤差はわずか60cmだった2回目のタッチダウン
左はタッチダウンの目標地点やターゲットマーカー(TM)との位置関係を示したもの。右はタッチダウン時のサンプラーホーンの接地点をもう少し拡大して示したもの。(出所:JAXA)
動画 タッチダウンの様子を捉えたサンプラーホーン撮影用小型モニターカメラ「CAM-H」の画像のコマ送り(10倍速)
動画 タッチダウンの様子を捉えたサンプラーホーン撮影用小型モニターカメラ「CAM-H」の画像のコマ送り(10倍速)
高度約8.5mから降下しタッチダウン後に上昇し、高度約150mに至るまでの様子。撮影間隔は0.5~5秒。(出所:JAXA)

タッチダウン1回目の大成功の代償

 こうした工学的な快挙を成し遂げたはやぶさ2だが、実は状態は万全ではなかった。名誉の勲章ともいえる“負傷”を負っていたのだ。

 着陸誤差1mとされた1回目のタッチダウン――。その大成功の裏で、はやぶさ2はある代償を支払っていた。その代償とは、光学カメラ「ONC-W1」と低高度で使う高度計のLRF(レーザー・レンジ・ファインダー)のそれぞれの光学系に曇りが生じたことである(図2)。

図2 探査機本体の底面に配置された広角の光学カメラ「ONC-W1」
図2 探査機本体の底面に配置された広角の光学カメラ「ONC-W1」
(出所:JAXA)
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 はやぶさ2はタッチダウンの瞬間、小惑星に向けて弾丸を発射し、小惑星表面の物質を砕いて巻き上げることで、その物質を試料として採取する。また、弾丸発射とほぼ同時にスラスターを小惑星表面に向けて噴き、上昇に転じる。この弾丸の発射とスラスターの噴射で巻き上げられた粒子が、ONC-W1と低高度で使う高度計のLRFのそれぞれの光学系に付着した結果というのがJAXAの見解である。両装備はいずれも探査機本体の底面に下向きに取り付けられており、粒子の付着はタッチダウンの代償とも言えた。

 それによってONC-W1とLRFのそれぞれの受光強度が低下。JAXA宇宙科学研究所(ISAS)「はやぶさ2」プロジェクトチームファンクションマネージャで航法誘導制御担当の照井冬人氏によると、大まかにはONC-W1で3割減程度、LRFに至ってはおそらく半分以下という状況だった(図3)。

図3 「はやぶさ2」プロジェクトチームファンクションマネージャで航法誘導制御担当の照井冬人氏
図3 「はやぶさ2」プロジェクトチームファンクションマネージャで航法誘導制御担当の照井冬人氏
(撮影:日経 xTECH)
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