「一度、はやぶさ2プロジェクトは立ち止まろうと思います」――。2018年10月11日、記者会見に登場した宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所(ISAS)「はやぶさ2」プロジェクトチームプロジェクトマネージャの津田雄一氏はこう切り出した(図1)。

図1 JAXA宇宙科学研究所「はやぶさ2」プロジェクトチームプロジェクトマネージャの津田雄一氏
図1 JAXA宇宙科学研究所「はやぶさ2」プロジェクトチームプロジェクトマネージャの津田雄一氏
写真は2019年4月18日に撮影したもの。(撮影:日経 xTECH)
[画像のクリックで拡大表示]

 JAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」のミッションは、前回紹介したように、生命誕生のカギを握る水や有機物の存在が期待されるC型小惑星「リュウグウ」から、その“かけら”(物質)を持ち帰ること。できることなら、そのかけらを複数地点から、さらには小惑星内部の物質も含めて採取することを使命とする。このため当初の計画では、2018年10月後半に1回目のタッチダウン(着陸)を行い、それを含めて2019年5月ごろまでに最大3回のタッチダウンを実施する構想を描いていた。だが、リュウグウの状況が良く分かってきたことで、その計画をそのまま推し進めることはリスクが高く、計画の見直しが必要なことが判明してきたのだ。

 津田氏によれば、見直しが必要になった最大の要因はリュウグウの地形である。実は、はやぶさ2プロジェクトでは、100m四方にわたって平たんな領域を探し、その中心部を目標地点として1回目と2回目のタッチダウンを実施する計画だった。当時、はやぶさ2チームが想定していたはやぶさ2の着陸精度(タッチダウンの目標地点から実際のタッチダウン地点までの最大誤差)は「50m」(同氏)。その精度を考慮すると、はやぶさ2を岩石にぶつけず安全にタッチダウンさせるためにはその目標地点の周囲50mが平たんであることが必要だった。

 同チームは、リュウグウの表面をできるだけ接近して観測したり、リュウグウ表面に投下したローバーで撮影した画像を使ったりして、約50cm以上の岩石の大きさと分布を分析し、タッチダウンできる場所がないか解析を続けてきた。だが、そうした場所を依然として見つけられずにいた。

 逆に、調べれば調べるほど疑う余地がなくなっていったのが、リュウグウがいかにタッチダウンが困難な小惑星であるかということだ。実際、津田氏は記者説明会でリュウグウについてこう語っている。「小惑星の全域にわたってどこもかしこも凸凹している。(中略)近づいてみれば、意外に(表面は凸凹が少なく)すべすべしていたとなる(かもしれないという)期待もあったのですが、やはりそう簡単ではなかった。凸凹度が厳しいということが判明しました」(図2)。そして、記者から計画変更に対する率直な気持ちを聞かれると、「全く新しい世界を探査するので、何もかもが計画通りに行くとは思っていませんでした。それなので、いよいよリュウグウが牙をむいてきたな、と思っています」と内に秘めた闘志を露にした。

図2 はやぶさ2が分離した小型着陸機「MINERVA-II1」が搭載していた探査ローバー「Rover-1A」が撮影したリュウグウ表面の写真
図2 はやぶさ2が分離した小型着陸機「MINERVA-II1」が搭載していた探査ローバー「Rover-1A」が撮影したリュウグウ表面の写真
(出所:JAXA)
[画像のクリックで拡大表示]

この先は有料会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)が2020年1月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら