今、自動車メーカーはかつてない数と大きさの課題に直面している。その背景として従来経験したことがない全く新しく、かつ極めて大きな変化が押し寄せている。

 例えば、燃費規制の強化と電気自動車(EV)の開発との関係だ。世界の燃費規制は段階的に厳しさが増している。これを満たすために、自動車メーカーはEVの開発・製造・販売を早急に拡大する必要がある。例えば、欧州では2020年1月1日以降、各メーカー当たり95%のクルマが、1km当たり平均95g以下の二酸化炭素(CO2)しか排出できない。1年後には、全ての新車が平均でこのレベルを超えてはならず、上回る場合は1台当たり95ユーロ/gの罰金が科せられる。

 その一方、市場では内燃機関のクルマよりもEVは高価と認識されており、ニーズは必ずしもEVに向いていない。1回の充電で500km程度走行することが市場から期待されているため、より大容量のバッテリーを積み、さらに高額になる傾向がある。結果的に、欧米の自動車メーカーが最近発表したり販売を開始したりしているEVは高級車が中心となっている。加えて、最近では国際的に大型SUV(多目的スポーツ車)など比較的燃費の悪いクルマの人気が高まっており、欧州における1台当たりのCO2の平均排出量は2017年から2018年にかけて上昇してしまった。燃費規制のために出荷台数を拡大するには、バッテリーの廉価化によって量産車セグメントのEVの販売台数を拡大することが急務となっている。

EVを中心に自動車輸出国を目指す中国

 そのためには十分な量の電池を調達しなければならない。ところが、2021年までには中国が電池の世界生産量の約7割を押さえると予測されている。約20年も前にエンジン車では欧米日の先行する企業に勝てないと考えた中国は、同じスタートポイントに立てるEVに活路を見いだし、巨額の投資を行ってバッテリーを製造過程から押さえた。加えて、エンジン車とは異なり、EVに対しては大都市での抽選や購入をなくしてナンバープレートを入手できるようにした。さらには、2010年以降、EVの購入時に補助金を付けることで販売台数を増やしている。この補助金は2021年初めには完全に停止される予定だが、それまでに大規模工場(メガ・ギガファクトリー)を拡大してバッテリーの価格を下げるか、あるいは十分に下がらない場合はエンジン車の購入時に必要なナンバープレートの取得価格を上げるなどの施策を行うことで、EVの販売増に誘導する。

 また、海外の自動車メーカーのEVを中国国内で生産する場合、中国製のバッテリーの利用が期待される。販売台数の約半分を中国市場が占めるドイツ・フォルクスワーゲン(Volkswagen;VW)は、Jetta事業部で「VW by Jetta」というブランドを中国で立ち上げ、量産型EVを中国で生産する。中国政府は昨年(2018年)来、EVであれば100%外資で製造工場を稼働することを可能としている。米テスラ(Tesla)は2019年1月に上海郊外に工場を竣工し、同年6月には中国国内で中国製Teslaの受注を開始し、6~8カ月以内に出荷を開始すると発表している。この中国製Teslaには中国製バッテリーが利用される可能性が高い。こうして中国国内でのEVの生産台数を拡大し、ゆくゆくはEVを中心とした自動車輸出国になる考えだ。

「Jetta」ブランドのSUV
VWが2019年2月に発表した、中国で立ち上げる新ブランド。(写真:VW)
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