2019年6月に開催された学会「VLSI Symposia 2019」。相次いで発表されたのが、「AIチップ」とも呼ばれる深層ニューラルネットワーク(DNN)チップ向けの各種技術である。性能改善が遅いCPUコアに代わって、DNNチップは今後の半導体の大きなトレンドの1つになりそうだ。DNNチップが不揮発性メモリーのキラー用途となる可能性も見えつつある。VLSIシンポジウムの内容を2回に分けて解説する。今回は後編。

前編はこちら

 今回のVLSIシンポジウムでは、抵抗変化型不揮発性メモリー(ReRAM)を用いたCIM型チップもいくつか登場した。単なる積和演算だけではなく、多くの付加機能をアピールした講演もあった。

 それが、米University of Wisconsin Madison(UWM)とフランス原子力庁電子情報技術研究所(CEA-Leti)の研究者が発表した「Liquid Silicon」だ(図1、論文番号C17-3)。あたかも液体のように機能を自在に変えられるほど高いプログラム性を備えた半導体という意味である。

[画像のクリックで拡大表示]
図1 FPGAを超える効率とプログラム性を実現
University of Wisconsin Madisonが開発した「Liquid Silicon」の概要。抵抗変化型メモリーを利用したCIM型回路であり、接続ノードを工夫することで、論理演算に加えて、検索、メモリー、2値のニューラルネットワークという計4役をこなせるようにした(a~c)。電力効率は、東北大学が2015年に開発した不揮発性FPGAに対してビッグデータ処理で100倍以上、演算量が多い用途でも同3倍以上だという。(図と写真:(a)、(b)、(d)はIEEE)

 具体的には、メモリー素子にReRAMを用いた1T1Rセルの組み合わせや使い方、そしてSAの役割を少し変えるだけで、(1)論理演算機能、(2)検索、(3)メモリーブロック、(4)2値(Binary)のニューラルネットワーク(BNN)――の4種類の機能を持たせることができるとする。

 これらの機能は、チップ内で任意の領域に割り当てられるので、これ1つでSoC(System on a Chip)のような働きも可能になるという。「世界初の汎用CIMプロセッサーを開発した」(UWMの講演者)。2019年内にも、SoCとしての動作を確認する予定だ。

 こうしたプログラム性はFPGAが元祖だが、「Liquid Siliconにビッグデータ処理をさせた場合の単位消費電力に対する演算性能(演算効率)は、不揮発性FPGAの100倍」(講演者)と極めて高い。

PCMが弱点克服で車載へ

 CIM型ICやプロセッサーは、不揮発性メモリーの各技術にとってもキラー用途の1つになる可能性がある。

 ところが、これまでの不揮発性メモリーには、さまざまな技術的課題が残っていた。今回のVLSIシンポジウムでは、それの課題を克服し、本格実用化へ踏み出すことを見通した発表が相次いだ。

この先は有料会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら