2019年7月15日についに完了したみずほ銀行のシステム統合。20年にも及ぶその苦闘を「日経コンピュータ」の記事で振り返る。2001年1月1日号は、みずほフィナンシャルグループがみずほ銀行の勘定系を第一勧業銀行の既存システムに片寄せする方針を撤回したと報じた。

 みずほフィナンシャルグループは2000年11月、それまで進めてきた第一勧業銀行と富士銀行の勘定系および営業店システムの統合作業を一時中断した。中断の理由は、統合費用が当初見込みより膨れ上がったこととみられる。みずほグループは統合方法を再考する。2002年4月に予定していたシステム一本化は困難になりつつある。

 「あなたの質問には誤解がある。我々の狙いは、戦略的なIT(情報技術)投資を加速すること。その原資を得るために現行システムを統合して、維持費用を下げる。したがって、現行システムの統合は速く、安く、確実にやればそれでよい。そのために3行の現行システムから一つを選んで残し、そこに他行を片寄せ(一本化)する方法を選んだ」。

 1年前の1999年12月12日、みずほフィナンシャルグループ(以下みずほグループ)の設立を正式発表した記者会見の席上、日本興業銀行の西村正雄頭取は筆者の質問にこう答えた。質問は、「第一勧業銀行、富士銀行、興銀の現行システムを統合する作業に力と時間をとられ、本来急ぐべき新しい情報化が進まなくなるのではないか」というものだった。

 西村頭取に先立って、富士銀行の山本恵朗頭取がこの質問に答え、「インターネット・バンキングに代表される新しいIT投資は、統合の間も止めず、どんどんやる。統合作業をしているから、新商品やサービスを出せないということはない」と強調した。

 それから9カ月後の2000年9月29日には3銀行を傘下におさめる持ち株会社、みずほホールディングスが設立され、みずほグループは第一歩を踏み出した。しかし、筆者の調べによれば、みずほグループのシステム統合プロジェクトは、「遅く、金がかかり、不確かな」状況に陥りつつある。

ほぼすべてのプロジェクトが足踏み

 まずプロジェクトの中の最大案件である、リテール(個人、中堅・中小企業顧客)分野の勘定系および営業店システムの統合作業が難航している。2番目に大きい案件である、ホールセール(大企業・金融法人顧客)分野の勘定系システムの統合も相当に難しいことがわかってきた。

 さらに国際システムの統合、みずほグループ内の信託銀行の統合も軒並み足踏みしている。情報系システムの統合も当然、進んでいない。一連の勘定系システムの仕様が固まらない限り、そこからデータを受け取る情報系の統合を進めようがないからだ。みずほグループの顧客には関係ないものの、3銀行の給与計算システムの統合も進んでいない。

 本誌はみずほホールディングスに取材を申し入れたが、2000年12月の段階ではできなかった。ただし、主要な点については書面で確認作業を行った。以下では、複数の関係者を取材した結果に基づき、みずほグループのシステム統合プロジェクトの現状と今後の展望を報告する。

リテール勘定系の統合計画を見直し

 2000年11月、みずほグループはそれまで進めてきたリテール分野の勘定系および営業店システムの統合作業をいったん中断した。「統合方針を見直すため、3銀行の頭取が事実上の中断を最終決定した」(関係者)。

 ここで言う統合方針とは1999年12月12日、みずほグループの発足時に公表されたものである。リテール分野の勘定系の統合方針は、第一勧銀の勘定系(富士通製メインフレームで稼働)を採用し、ここに富士銀および興銀のリテール分野の顧客データを移行する。片寄せ後に、富士銀の現行勘定系(IBM製メインフレームで稼働)は廃棄する。ただし、投資信託システムについては富士銀のものに一本化する。

 リテール向け勘定系の統合が完了する時期は2002年4月を予定していた。この時期から、第一勧銀と富士銀のリテール部門を統合した「みずほ銀行」が発足するからである。

 みずほグループは、この統合方針を固めるまでに、4カ月弱を費やした。第一勧銀と富士銀がどちらの勘定系を残すかについて徹底的に検討したためだ。第一勧銀、富士銀、興銀が事業統合の方針を最初に打ち出したのは、1999年8月20日。統合方針の発表が12月12日なので、この間に4カ月あった。

営業店システムで3メーカーが激突

 ただし、勘定系と対になって動き、支店の窓口業務を処理する営業店システムの統合方針は、1999年12月の段階で決められず、決定は2000年にずれ込んだ。第一勧銀は勘定系と親和性が高い自行の営業店システム(富士通製)を推した。これに対し、富士銀は更新してからさほど間がない営業店システム(主として沖電気工業製)の存続を希望した。

 ここへ日立製作所が庄山悦彦社長名の提案書を3行の頭取宛に提出し、営業店システムの検討作業はさらに複雑になった。興銀の勘定系と営業店システムは日立が納入している。「興銀が扱っていた金融債を第一勧銀や富士銀の支店で販売するために、日立の営業店システムが必要になる」というのが日立の提案だった。銀行の営業店システムはコンピュータ・メーカーにとって勘定系メインフレームを上回る収益源であり、日立に限らず各メーカーとも必死になった。

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