多忙を極めるリーダーにとって、メンバーにうまく仕事を任せることは不可欠なスキルだ。しかし任せ方に失敗すると、仕事は途端に進まなくなる。本特集では日経SYSTEMSの過去記事を再編集。現場のリーダーが実践する任せ方のテクニックを習得しよう。

 メンバーに仕事を任せてよいのかどうか。チームを率いるリーダーはまず、このことを見極めなければならない。

 メンバーに仕事を任せるテクニックは、任せる前の「準備」、任せるときの「依頼」、任せた後の「フォロー」という3つのフェーズで実践する必要がある。このうち、準備フェーズで求められるのは、メンバーのスキルを見極めるテクニックである。

 メンバーのスキルを見極める最も確実な方法は、実際に仕事を一部やってもらうことである。ITコンサルタントのIさんは、プロジェクトで仕事を任せる際、メンバーに仕事の一部を任せて様子を見ている。そうすることで、「メンバーにとって未経験の仕事でも、任せられそうだと確信を持てることが少なくない」(Iさん)という。

 実際、Iさんがマネジャーを務めたあるプロジェクトでは、「ユーザーとの調整をさせるには頼りない」と周囲から評価されていたメンバーのJさんに、彼ならできるという確信を持って、ユーザーとの調整が必要な仕様策定を任せることができた。その際、IさんはJさんに仕事を任せられるかどうかを見極めるため次の手順を踏んだ。

 まずJさんをユーザーとの打ち合わせに同席させて、仕様策定の一部を任せてみた。すると「年上であるユーザー企業のマネジャー相手に、スムーズに打ち合わせを進めていた」(Iさん)。相手の要望をうまく引き出した上で、その要望を図に描くなどして確認していたのだ。

 Iさんは打ち合わせが終わってすぐ、Jさんに「君に仕様策定を任せたい」と伝えた。ただしJさんにとって未経験の仕事だったので、仕様策定の進め方やポイントをIさんに付いて習得してもらった。その後、Jさんに仕様策定のスケジュール設定やヒアリングを基にした一部の仕様書作成をしてもらい、内容をチェック。独り立ちできると判断し、打ち合わせに出向かせるようにした。「こちらが深く関与しなくても仕事を自律的に進めてくれた」と、Iさんは話す。

仕事の進め方を答えられるかを確認

 リーダーがあまりに多忙で、仕事の一部を任せて様子を見る余裕さえないこともあるだろう。そのときは、仕事の見通しを尋ねて見極めるテクニックが役立つ。参考になるのは、社会心理学者で大学准教授のSさんが勧める見極めの手法だ。

 この手法は、仕事を任せる際に「細かく指示したり助言したりするティーチングを主体にしていくべきか」「相手(任される側)の考えを引き出していくコーチングのスタイルをとるべきか」を見極めるためのものだ。具体的には次の2つのポイントで見極める。

 1つ目のポイントは、リーダーがこれから任せようとしている仕事の進め方をメンバーに尋ねて、どう答えるのかを見ること。このときメンバーから具体的な 答えが返ってきて、その内容が納得のいくものであれば、「メンバーは仕事を進める上で見通しが立っている」と判断できる。

メンバーに任せられるかどうかの見極め方
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 ここでメンバーが何も答えられなかったり、回答が的外れだったりした場合は、メンバーに仕事を任せても、自律的に進めてもらえる見込みは小さい。その仕事に対しては依存タイプだと見なして、細かく指示を出す“積極的なティーチング”で仕事を進めていく。