リーダーシップやマネジメント能力を重視する従来型のプロジェクトマネジメント手法だけでは、プロジェクト運営がうまくいかなくなっている。プロジェクトマネジャーには新たに、「ファシリテーション」の能力が求められる。

 中堅製造業の生産管理システム構築プロジェクトを担当する若手プロマネ原川の視点から、ファシリテーションについて解説していく。プロジェクトが遅延し協力会社とも対立してしまった状況を、原川はどう乗り切るのか。


〈イラスト:串田 千麻〉

 原川のプロジェクトで開発を請け負っている協力会社A社では、遅れ気味になってきた進捗の対策会議が開かれていた。ユーザーから指定されたパッケージソフトを利用していたが、そのパッケージソフトが遅延の原因になっていたからだ。

A社エンジニア佐藤:どうしてドキュメントもサポートもないこんなパッケージソフトを使うんですか。機能が不十分でカスタマイズもできません。使うのをやめるように言いましょう。

A社リーダー松田:気持ちは分かるが果たして元請けが聞いてくれるのだろうか…。

 A社の佐藤は数々の修羅場をくぐり抜けてきたベテランエンジニア。部下を守るためにも、時に理不尽なことを言ってくる元請けに不満を持っていた。一方、元請け企業のプロジェクトマネジャー原川と、開発リーダーの高野も協議中だった。

高野:おそらくA社は、パッケージソフトを利用するのは無理だと言ってくると思います。でも顧客から指定されたパッケージなので変更できません。このままいきましょう。

原川:…。

 熟練エンジニアの高野は最新技術にも精通しており、今回もソースコードを読み解くなどの手間をかければ、パッケージソフトを利用できると考えていた。意見の分かれるA社と原川たちは会議を設けることになった。ただしこのままではお互いを非難し合い、対立が深まるのは目に見えていた。


協力会社との信頼が損なわれる

 プロジェクトが遅延し始めたり、佳境を迎えて余裕がなくなったりすると、元請けとなるITベンダーのプロジェクトマネジャーやITエンジニアは、協力会社に対して「多少の無理を言っても、何でも言うことを聞いてくれる」と思って振る舞うケースがある。元請けと協力会社には、発注者と受注者という社会的関係性があり、発注者が受注者に対して無理を言いがちだ。

 しかし発注者、受注者という社会的関係性を背景に、協力会社の意見を抑え込んだり、否定的な態度に出たりすると、協力企業のモチベーションは下がる。その結果、協力会社との信頼関係は損なわれ、作業は予定通りに進まなくなり、やがては取り返しがつかない状態になる。

 プロジェクトマネジャーは発注者、受注者といった区別なく、平等に振る舞うことが重要になる。少ない人数で、かつ短い期間で複雑なプロジェクトを進めるためには、協力会社を含めてメンバー全員が最大の力を発揮する必要があるからだ。協力会社が離脱すれば、プロジェクトの運営に影響が出る。

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