本特集では、日経コンピュータの看板コラム「動かないコンピュータ」の過去記事の中から、セキュリティー関連の事例を14本取り上げていく。トラブルの真相から、今後のリスク回避につなげてほしい。

 NTTドコモが大規模な通信トラブルを2カ月に二度発生させた。音声通話やデータ通信が利用できなくなる障害では252万人に、メールアドレスが他人のものと入れ替わる障害は約1万8000人に影響した。スマートフォンの急速な普及にシステムや組織体制が追いついていなかった。

 「ドコモは安心、安全で支持されてきた。にもかかわらず、ご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げたい」。2012年1月27日、NTTドコモの山田隆持社長は記者会見で深々と頭を下げた。

 NTTドコモは2012年1月までの2カ月間に、二つの大規模なトラブルを引き起こした。1月25日には東京都内でパケット交換機の障害が発生。4時間以上にわたり、最大252万人の携帯電話とスマートフォンで音声通話やデータ通信が使いにくくなった。

 これに先駆け、2011年12月20日にはスマホ向けインターネット接続サービス「spモード」で、spモードメールのアドレスが他人のものと置き換わる障害が起こった。他人のメールを閲覧できてしまうなど、通信の秘密を侵害する事態となった。影響を受けたユーザーは約1万8000人に上る。

 トラブルが続いたのは、偶然ではない。二つの障害の原因を探ると、NTTドコモのシステムと組織体制に潜む問題が見えてくる。

新型交換機で容量超過が発生

 2012年1月25日の通信障害のきっかけは、スマホの利用者増加に伴う通信インフラの増強にあった。同日に本格導入した新型のパケット交換機で容量超過が起きた。「性能見積もりが甘かった」(岩?文夫取締役常務執行役員)。

 通信障害が発生したのは、同日の午前8時26分のことだ。端末がFOMA網に接続を要求するために発信する「制御信号」の量が増加し、一部の制御信号が破棄されるなど、パケット通信が利用しにくい状態になった。

 午前9時過ぎ、JR山手線で運行トラブルが発生したのと前後して、制御信号量がさらに急増した。パケット交換機の容量を超過した結果、自動的に通信規制がかかった。自動で通信規制がかかると、音声通信とパケット通信の双方が制限される。このため、本来はパケット通信だけに影響する障害が、音声通信にまで拡大した。

 NTTドコモは午前10時56分にパケット交換機を旧機種に戻す作業を開始。午後1時8分にすべての規制を解除した。

 トラブルが発生したのは、新型機を導入していたエリアだけだった。NTTドコモは25日未明に、東京都目黒区、大田区、品川区など14区をカバーするパケット交換機7台を、新型機3台に切り替えた。切り替えの前に5日間の試用期間を設けていたが、それでもトラブルが起こってしまった。

この先は会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら