工事の中断や根拠なき契約のルール――。公共事業の発注者に対して、建設会社や建設コンサルタント会社などの受注者が抱く不満は今も昔も数多い。双方が良好な関係を築くために、今後求められる発注者像とは。発注者に改善を求める受注者の訴えとともに、日経コンストラクション2014年7月28日号の特集記事を再構成してお届けする。



 ここ数年で、発注者からの工事一時中止の指示が増えている──。高速道路会社の工事を多く手掛ける建設会社から、このような意見が寄せられた。

 工事一時中止は、工事請負契約書に記載された発注者の権利だ。受注者の責任に帰さない理由で施工不能となった場合、発注者が現場を止められる。代表的な要因に、用地買収や申請協議の遅れ、自然災害の発生などがある。

 発注者の落ち度で工事の中断を余儀なくされても、受注者は黙って受け入れるのが従来の姿だった。ところが2014年1月、発注者にとって前代未聞の出来事が起こった。繰り返される工事一時中止命令で、受注者が契約を解除するトラブルが発生したのだ。

現場で約11カ月間待ちぼうけ

 問題の現場は、中日本高速道路会社が発注した「新名神高速道路安坂山高架橋(下部工)工事」だ。亀山西ジャンクション付近に橋脚22基と基礎を構築する。12年12月に約10億円で銭高組が受注した。

 同工事の施工範囲全てが砂防指定地内にあるため、工事着手には三重県から「砂防指定地内行為許可」を取得する必要があった。

中日本高速道路会社は、東名阪自動車道や伊勢湾岸自動車道などが結節する四日市ジャンクション(JCT)から分岐して亀山西JCTにつながる新名神高速道路の建設を進めている。写真奥に見える高速道路は、既に開通している新名神高速道路亀山連絡路。安坂山高架橋はこの道路をまたぐように架かる予定。辺り一面は砂防指定地に指定されている(写真:日経コンストラクション)
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建設中の新名神高速道路とトラブルが発生した現場の位置(資料:日経コンストラクション)
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 中日本高速道路は、13年2月1日から本格的に工事着手できるよう、それまでに許可を得るもくろみで発注した。ところが契約後の申請段階で、内容の不備が判明。その修正に想定外の時間が掛かり、結局、3度にわたる一時中止を命ずることに。銭高組は現場に事務所を設けたものの、約11カ月間、何もできない日が続いた。

 業を煮やした銭高組は、13年12月26日に契約解除を申し入れる。契約書第48条に、中止期間が工期の半分または6カ月を超えた場合、契約を解除できるという条項があり、それを行使した。

 くしくもその翌日に、三重県からの行為許可が下りた。しかし、事態は改善しなかった。銭高組は14年1月14日に契約解除の通知書を正式に渡し、同日付けで中日本高速道路が受理した。

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