同じ事象でもマクロ視点とミクロ視点では見え方が全く違うから、両方の視点から検討すべし――。駆け出しの記者のころ、取材相手から聞いた言葉だ。2019年8月23日に発生したAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)の6時間に及ぶ障害は、その「教え」の重要性を改めて認識させてくれた。

 AWSの障害はマクロ視点、つまり社会全般への影響の観点からすると、被害や迷惑が多方面に及ぶ重大なトラブルだった。確認されているだけでも30社以上の利用企業が何らかのトラブルに見舞われた。EC(電子商取引)サイトにアクセスできなくなったり、スマートフォン決済で支払いやチャージができなくなったりするなど、多くの消費者にも迷惑をかけた。

 では被害を受けた個々の企業の観点、つまりミクロ視点でAWSの障害をとらえるとどうか。AWSの障害が社会に与えた影響の全体の大きさは、個々の企業にとって本質的な問題ではない。自社のシステムが利用できなくなり、顧客にサービスを提供できなくなった点が問題なのだ。その意味では、自社で運用するシステムで障害が発生した場合と変わりがない。

 クラウドが普及した今でも、リスクを恐れて利用に二の足を踏む企業は多い。もしそうした企業のIT担当者が今回、30社超に及んだ障害全体の大きさを目の当たりにして「やはりクラウドはリスクが高いな」と考えるようであれば、それは間違いだ。マクロ視点での社会的リスクをミクロ視点での自社リスクと取り違えている。

 クラウド事業者が保証する可用性などが自らシステムを運用する場合と比べて同等以上であり、トータルコストが安く済むならば、クラウドを活用するのは合理的な選択だ。自社運用と同様に万が一の対策を怠らなければ、AWSに障害があったからと言って、クラウド利用をためらう必要はない。

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