「ロンドンのキングスクロスは、人が集まるスペースを設けたことで価値が生まれ、グーグルなどの企業が入って不動産価値が上がった。ポスト五輪の日本の都市もそのように変わるのではないか」。そう語るのは、英国の設計事務所PLP Architecture(アーキテクチュア)で取締役を務める相浦みどり氏だ。同社には今、2012年の五輪後のロンドンを手本にしようと、日本から様々な事業者が視察や依頼に訪れるという。相浦氏は、ポスト五輪の日本に必要なのは「次世代に適応可能な建築」と考え、日本の都市開発に一石を投じる。

ロンドンに拠点を構えるPLPアーキテクチュアで、取締役を務めている相浦みどり氏(写真:PLP Architecture)
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 ロンドンのテムズ川南岸で、総事業費13億ポンド(約1700億円)を投じる民間再開発プロジェクト「Bankside Yards(バンクサイドヤード)」が進行中だ。鉄道橋で約150年間分断されていた東西エリアをつなぎ、住宅やオフィスなどが入る8つの建物と、8つの公共スペースを生み出す。マスタープラン(基本的・総合的な構想計画)づくりや、6棟の設計などを、PLPアーキテクチュアの相浦氏らが手掛ける。

ロンドンで進行中の再開発プロジェクト「Bankside Yards(バンクサイドヤード)」の遠景イメージ。パースの中央で高層ビルが立ち並ぶ一画が、対象地。周辺の建物に調和するよう、敷地の内から外に向かって建物の高さが徐々に低くなるように計画している(資料:PLP Architecture)
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バンクサイドヤードの完成イメージ。鉄道橋の脇に、地下のカルチャーセンターへと続く広場を設ける(資料:PLP Architecture)
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 開発は鉄道橋を境に2段階で進める。フェーズ1は2023年、フェーズ2は27~28年ごろに完成する見込みだ。

地図の中央に赤線で囲った部分が、バンクサイドヤードの対象地。東にサウスバンクセンター、西にテートキャンパスがあり、ロンドンを代表するカルチャースペースに囲まれた立地だ(資料:PLP Architecture)
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バンクサイドヤードではオフィスや住宅など複数の機能をミックスさせる(資料:PLP Architecture)
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 計画に当たり、相浦氏らはGenZ(ジェネレーションゼット、ミレニアル世代に次ぐ1990年代後半から2000年代にかけて生まれた世代)が働く1日を想定した。ワーカーの履歴データを蓄積し、例えばワーカーが出勤前にカフェに行くと自分好みのドリンクが自動的に準備され、オフィスの席に着くと自分好みに照明や温度が調整されているイメージだ。

 「未来予測にまだ社会が付いてこなくても、それを今、マスタープランの段階から都市に埋め込んでおかないと、社会の変化に空間が適応できなくなる。幸いにも、そうした設計者の役割に気付いた発注者が海外にも日本にもいて、私たちの設計事務所には10年後の予測も含めた仕事の依頼が増えている」(相浦氏)

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