岩手県住田町にある「大船渡消防署住田分署」(以下、住田分署)は、全国でも珍しい木造の消防署だ。2016年のプロポーザルで選ばれたSALHAUS(サルハウス)が設計を手掛け、2018年に竣工した。14年に完成した木造の役場庁舎の斜め向かいに立つ。

岩手県住田町で建設課住宅係の技師を務める田畑耕太郎氏。右手が木造の役場庁舎で、背後が「大船渡消防署住田分署」(写真:伊藤 美希子)
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 住田町建設課技師の田畑耕太郎氏は、当初は地元業者に入札で頼むという話もあった住田分署の設計業務のプロポーザルを企画し、実施要領をゼロから練った。入庁してまだ間もない頃だ。秋田市出身で、初めて住田町を訪れたのは東京大学大学院修士2年の夏。仮設住宅団地内での支援活動に参加するためだった。

 そのときに当時の町長から、小さな自治体で働くことの意義と面白さを説かれた。やりがいを感じただけではなく、東日本大震災の被災地の後方支援に当たっている自治体において、建築士という職能が求められているのなら、ぜひとも役に立ちたいと思った。

 修士論文のテーマがナイロビのスラムで、ODA(政府開発援助)関連プロジェクトを手掛ける設計事務所から内定を得ていたが、住田町入庁を決意したのは、そのような理由だ。「支援に訪れた我々を受け入れてくれた住田町と、町内の方々や、仮設住宅に住む被災者の方々に恩返ししたいと思ったのが、移住を決めた当時の一番のモチベーションだった。地域の方々から様々な形で逆に支援してもらったから」と振り返る。

 住田町建設課の職員は現在、住宅係、土木係、水道係を合わせて9人。建築士の資格を持つのは田畑氏のみだ。

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