都会の真ん中に安く住み、通勤・通学のストレスや渋滞を無くしたい。米ハーバード大学の大学院で都市デザインを学んだ各務(かがみ)太郎氏は、極小空間を研究してきた。その際、日本のマンガ喫茶に注目。狭くても幸福感が高い都心の空間づくりを追求し、茶室に泊まるようなホテルを発案。自ら発注者兼設計者になって、ホテルの開業にこぎ着けた。

「hotel zen tokyo」の発注者兼設計者で、運営会社SENの共同創業者である各務太郎氏(写真:日経アーキテクチュア)
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 カプセルホテルにある部屋の2倍ほどの空間を「茶室」に見立てた、全く新しいコンセプトの宿泊施設が誕生した。東京・人形町に2019年3月にオープンした「hotel zen tokyo(ホテル・ゼン・トーキョー)」だ。人形町を選んだのは、東京・箱崎の東京シティエアターミナルのすぐそばで羽田・成田の両空港にアクセスしやすいほか、東京駅にも近く、地下鉄の乗り継ぎにも便利だからだ。

hotel zen tokyoの部屋が並ぶ廊下。各部屋の黒い布を下ろせば、外から中が見えなくなる。トイレやシャワーは共用(写真:SEN)
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 運営するのは、スタートアップ企業のSEN(セン、東京都中央区)。同社を仲間と共同創業したのは、ホテルの設計者でもある各務氏だ。まだ31歳と若い。

 経歴はちょっと変わっている。早稲田大学で建築を学ぶも、11年の卒業と同時に電通に入社。CMプランナーとして広告の仕事に没頭し、約3年後には第30回読売広告大賞最優秀賞を獲得した。

 するとあっさり電通を辞め、15年には米ハーバード大学デザイン大学院へ。再び建築と向き合い、都市デザインを研究。極小空間に傾倒していった。

 2017年に同大学院都市デザイン学修士課程を修了して帰国するや、大学院で考えた極小空間を東京の真ん中につくる夢に向かって走り出した。

 18年にSENを共同創業し、19年3月にhotel zen tokyoを開業した。

 各務氏の最終目標は安い家賃で住める狭い空間を都心に設けること。長時間の通勤・通学や渋滞に苦しむ人たちをストレスから解放する。都市デザインを学んだ各務氏が解決したい社会問題だ。

 しかし、いきなり格安な賃貸物件を開発するのは無理。そこで極小空間で構成するホテルに1泊することで「都心に1日暮らしてみる体験」を、まずは多くの人に提供しようと考えた。

 ここで注目したのが茶室だ。「茶の湯の世界では、空間は狭ければ狭いほど価値が高いとされる。空間の狭さを頭の中の想像で補うという精神が根底にあるからだ」(各務氏)

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