「テクノロジー活用の本質」をテーマに、日本を代表するCIO(最高情報責任者)やCDO(最高デジタル責任者)、有識者など約40人が議論した。日経 xTECHが2019年6月18日に都内で開催した「ITイノベーターズ会議」で飛び出した発言を紹介しよう。

 「大事なのは経験することと考えることだ」。ハウステンボス取締役CTO(最高技術責任者)として、世界初のロボットが接客をするホテル「変なホテル」を成功に導いたhapi-robo st社長の富田直美氏は、テクノロジー活用の本質についてこう断言する。

ハウステンボス取締役CTO/hapi-robo st社長の富田直美氏
(写真:井上 裕康)
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 「日本のリーダーの何が問題かというと、自分で経験していないことだ」と富田CTOは喝破。同氏は自分でドローンを飛ばし、セグウェイにも乗るという。使ってみたいテクノロジーが日本になければ、海外に出向く。

 「経験がある人と経験がない人の差は無限大だ」。富田CTOはこう主張する。「自分で経験したら『おいしかった』でも『まずかった』でも『怖かった』でも自分の意見を言える。だが多くのリーダーは経験せずに知識だけをため込んで、分かったつもりになっている」。デジタルトランスフォーメーション(DX)で新しい技術を活用するには、リーダーが率先して経験をしなければならない。

技術を中途半端に分かっている人、変革の邪魔

 経験を重視する姿勢は変なホテルにも表れている。ホテル内では多種多様なロボットが接客をしたり、バックヤードの仕事を自動化したりしている。開業時には30人のスタッフがいたが、2018年1月には6人で業務ができるようになった。

 富田CTOは「ばかばかしいロボットもいっぱい作った」と苦笑する。事業変革を担ったロボットの導入では、実際に宿泊客やホテルスタッフに使ってもらい、様々な意見、要望、クレームを集めたという。

 ホテルスタッフは技術に詳しくないものの、顧客満足度を第一に考えて切実な改善要求を出してくれるもの。その意見をロボットメーカーにフィードバックして改善している。こうしたスタイルを富田CTOは「アジャイルの究極だ」と胸を張る。「技術のことを中途半端に分かっていると『それはできなくて当たり前』と考えてしまう。こうした人間が変革の邪魔になる」

 問題解決ではメーカーと富田CTOが知恵を出し合う。「私は『あの技術とあの技術を組み合わせればできるよね』と平気で言う。その技術を持っている企業がそのメーカーと競合しているかどうかなど気にしない。私はソリューションが欲しいのであって、競合しているかどうかはメーカーの事情だ。私には関係がない」

 こうしたポリシーで実現したプロジェクトの一例として、300台のドローンを使った「光のショー」を挙げた。2017年7月のことだ。技術を手掛けたのは米インテル(Intel)と同社が買収した独アセンディング・テクノロジーズ(Ascending Technologies)。「アセンディング・テクノロジーズはドローンの群制御で世界一の技術を持つ。彼らのやっていることは、私にはできない」と称賛しつつ、「だが、文句は付けられる」と会場の笑いを誘った。

 富田CTOは「相手が世界一だろうと、よくないことはハッキリと言う。ホテルスタッフがロボットに文句を言うのと同じだ。やり取りを通じて人間関係ができると、どんどんアイデアが出てくる。世界一の会社とそうした関係になると、世界一のものが作れる」と話す。

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