経済産業省のDXリポートの中では、「2025年の崖」の要因としてSAP製ERPパッケージのサポート終了も挙げている。日本では、ERPを導入する際にアドオンソフトを開発したケースが多く、バージョンアップを難しくしている。海外で事業を展開する日本企業へのERP導入で数多くの実績を持つNTTデータ グローバルソリューションズの磯谷元伸社長に、現状の課題と解決策を聞いた。(聞き手は日経BP総研フェロー、桔梗原 富夫)

磯谷 元伸(いそや・もとのぶ)氏
1986年東京大学工学部を卒業し、日本電信電話入社。88年、NTTデータ通信(現NTTデータ)に転籍。NTTデータ経営研究所、法人ビジネス推進部企画部長などを経て、2010年流通・サービス事業本部副事業本部長。13年NTTデータビジネスブレインズ代表取締役社長、15年NTTデータ執行役員製造ITイノベーション事業本部長。2016年12月NTTデータ グローバルソリューションズ代表取締役社長を兼務。2018年6月より専任となり、現在に至る。(写真:陶山 勉)
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2019年7月に書籍『グローバル経営のモダナイゼーション』(日経BP)を発行しました。帯には「事例で語る2025年の崖の乗り越え方」とうたっています。磯谷社長ご自身も執筆されていますが、発行の狙いは何ですか。

 今、多くの日本企業の情報システムが転換期を迎えています。市場の変化が激しく、経営環境は厳しさを増しています。デジタル技術によって商品やサービスなどに変革をもたらすデジタルトランスフォーメーション(DX)の動きが拍車をかけています。こうした中で競争を勝ち抜くには、基幹系システムの刷新が不可欠です。NTTデータ グローバルソリューションズ(以下GSL)のトップコンサルタントたちの知見を集大成して、基幹系システムの刷新、グローバルでの全体最適の進め方をまとめれば、多くの日本企業に解決策を示唆できるのではないかと考えました。

 GSLは、SAP製ERPの導入・運用を手掛ける会社です。国内のNTTデータグループにはSAP関連の技術者が別々の企業に分散していたのですが、それを集約して2012年に設立しました。海外で事業を展開する日本企業の海外拠点向けビジネスを得意としています。

 NTTデータグループには、ドイツ・アイテリジェンスをはじめ全世界で1万人以上のSAPコンサルタントがいます。グループ企業と連携することで、当社がフロントになり、ワンストップで支援できる。お客様にいわば「和魂洋才」の対応ができることがGSLの強みです。

 ビジネスを手掛けていく中で、海外拠点でのERP導入は比較的楽なのに、日本本社での導入は現場の強さが壁になり、難しいことに気がつきました。そこに何らかのヒントが隠されているのではないかという問題意識があり、書籍を企画しました。経済産業省がDXレポートを出す前から構想していたのですが、DXレポートによって背中を押されたところはあります。

経済産業省のDXレポートを、磯谷社長はどうご覧になりましたか。

 DXレポートでは、既存システムの現状と課題について多くの紙幅を割いています。企業の「体幹」とも言える基幹系システムの老朽化やブラックボックス化がこのまま進むと何が起こるのか、「2025年の崖」という言葉を使って戦慄の将来予測がなされています。今、体幹を鍛え直さないと、世界のDXの波に日本企業だけが置いてきぼりにされてしまう。その危機感を産業界全体で共有すべきだと提言した点で非常によいレポートだと思います。

 日本企業にとってはちょうどいいチャンスです。今のシステムから新しい高度な経営管理の仕組みを持ったものにどう変えていくか。レポートでも言及しているように、日本企業はシステム維持管理にIT予算の7~8割も費やしている。工場ごとに異なるシステムを使っていたりして、効率が悪い。日本企業がグローバルで成長していく上で、基幹系システムがアキレス腱(けん)になってしまう恐れがあります。20~30年塩漬けになった基幹系システムを見直すよい契機にすべきですし、もはや残された時間はあまりありません。

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