前回は、日米の工作機械産業における顧客層の違いが、CNC(コンピューター数値制御)装置におけるMPUへの評価に影響を与え、その後の明暗が分かれたことを紹介した。だとすれば、より根本的な問いは、そのような顧客層の違いを生み出したものは一体何だったのかということになる。それを理解するためには、CNC装置の開発主導者に着目し、その動機付けの観点に立つ必要がある。

 CNC装置は、工作機械に付加されることで工作機械の価値を高めている。その意味でCNC装置と工作機械との関係は、以下の図に示すように、相互に価値を高め合う補完的な関係と言える。CNC装置は工作機械がなければその価値を生み出すことができない「補完製品」であり、工作機械メーカーは補完製品であるCNC装置を自社の工作機械に組み込み、自動車メーカーなどの最終顧客に納める。

CNC装置は工作機械に対する「補完製品」(筆者作成)
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 では、そのような特性を持つCNC装置の開発を主導するのは誰か。主に、(1)工作機械メーカーではない企業がCNC装置を開発して多くの工作機械メーカーに供給する形態、(2)工作機械メーカー自身が自社の工作機械に最適な独自CNC装置を開発する形態、の2つが考えられる。

 日米の工作機械産業は異なる形態を選択した。日本は、富士通(後のファナック)など当時は工作機械を造っていなかったメーカーがCNC装置の開発を主導したため、(1)になった。ただし、わずかではあるがCNC装置を内製した工作機械メーカーも存在した。例えば、大隈鉄工所(現オークマ)やワシノ機械などである。とはいえ、大半の工作機械メーカーはCNC装置の供給を専業メーカーに依存していた。

 この形態では、CNC装置と工作機械の開発主導者が異なるので、それぞれの開発は分業されることになる。必然的に、CNC装置専業メーカーは多くの工作機械メーカーに自社のCNC装置を売りたいという動機を持つので、汎用性の高いCNC装置を開発しようとする。特殊な用途でしか使われない切削性能や機能よりも、汎用性の高い切削性能や機能を優先しようとするだろう。

 さらに、(1)の形態では、分業の効率を高めるために、CNC装置と工作機械のインターフェースをルール化しようとする動機も働く。その結果、誰に言われるまでもなく、日本の工作機械産業全体でインターフェースの標準化が進んだ。日本のCNC工作機械の開発は、このようにして始まったのである。

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