日本やドイツを見れば分かるように、強い製造業の背後には必ずと言ってよいほど強い工作機械産業が存在し、縁の下の力持ちとして支えている。従って製造業の国産化を推進しようとすれば、製造業の階層構造を上から下に向かって掘り進んでいくことになる。

 中国の製造業の発展過程も、まさにこの経路をたどっていることが分かる。中国政府は「中国製造2025」という製造業の強化戦略で、ハイエンドな工作機械産業を確立しようとしている。その理由は、部品の海外調達依存から脱却し、国産化を推進しようとしているからに他ならない。

 さらに現在、ドイツの「インダストリー4.0」に代表されるデジタル化を進める世界的潮流の中では、生産現場の生産性向上に直結する工作機械の革新が不可欠であり、その役割を再評価する必要があるだろう。例えば、IoT(Internet of Things)の活用で生産プロセスを自動化して労働力不足を解消したり、故障予知で生産プロセスの突発故障を防いだりする試みが多くの生産現場で進められている。これらを実現するには、工作機械の高度化が避けて通れない。インダストリー4.0を推進するための中核産業としても、工作機械産業は重要な役割を担うようになる。

ものづくり産業の階層構造(筆者作成)
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母性原理と技術的収斂

 一国の工作機械産業の技術水準は、その国における製造業の基盤技術水準を規定する、といわれる。それは、工作機械の持つ母性原理と技術的収斂(しゅうれん)という2つの特性からきている。

 母性原理(Copying Principle)とは、「生産される機械や部品の精度は、それを作り出す工作機械の精度によって決まる」という法則である。つまり、作られる機械や部品は、それを作り出す工作機械の精度を超えることができない。そして、このような工作機械を作るのも、また工作機械である。ここでも再び母性原理が働く。つまり、精度が高い工作機械を作るためには、それ以上の精度を持った工作機械が必要になる。一国の工作機械産業の技術水準がものづくりの基盤技術を規定する理由の一端は、この母性原理にある。

 もう1つの「技術的収斂(Technological Convergence)」は、米スタンフォード大学(Stanford University)の技術史家ネイサン・ローゼンバーグ氏が指摘したもので、「多くの産業の技術水準は工作機械を経由してある一定範囲に収斂する」というメカニズムである。工作機械は、「機械を作る機械」として、あらゆる産業のものづくりの現場で使われる。ということは、工作機械のために開発された新しい技術や機能は、他産業でも使用されることでその機能や性能が他産業にまで波及するはずである。すなわち、工作機械を経由して新しい技術が多くの産業に普及するというわけだ。

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