「日本のものづくりはこれから一体どうなるのだろうか」という漠とした不安を持っておられる方は多いのではないか。そのための有効な処方箋は、産業の盛衰史を知り、そこからヒントを得ることである。筆者は先日、『日本のものづくりを支えたファナックとインテルの戦略―「工作機械産業」50年の革新史』(光文社新書)を上梓した。四半世紀以上にわたって世界最強であり続けた日本の工作機械産業の盛衰史を分析し、そこから日本が学べる点を論じたものだ。

 本連載では、この書籍をベースに、書籍では触れなかった新しい観点を追加して、産業の歴史から得られる教訓を考えてみたい。

 英国の政治家チャーチルは次のような言葉を残している。「人間が歴史から学んだことは、歴史から何も学んでいないということだ」。

 産業革命以来の産業の盛衰史を観察すると、様々な産業の発展過程で実は類似した構造が展開されてきたことに気が付くだろう。いわば歴史は繰り返すのである。それ故に、我々は本来歴史から多くを学ぶことができるはずなのだ。

柴田友厚(しばた・ともあつ)
東北大学大学院経済学研究科教授
1959年札幌市生まれ。博士(学術)。1983年京都大学理学部卒業。ファナック、笹川平和財団を経て、1998年筑波大学大学院MBA、2001年東京大学大学院博士課程修了。2004年香川大学教授。2011年4月から現職。「イノベーション論」担当。主要著作に『製品アーキテクチャの進化論』(白桃書房、2002年)、『日本企業のすり合わせ能力』(NTT出版、2012年)、『イノベーションの法則性』(中央経済社、2015年)、『日本のものづくりを支えた ファナックとインテルの戦略―「工作機械産業」50年の革新史』(光文社新書、2019年)など。国内外の学術ジャーナルへの論文掲載多数。