VR(Virtual Reality)普及の歴史に確実に名を刻むVRヘッドマウントディスプレー(HMD)が5月に登場した。米オキュラスVR(Oculus VR)が発売した単体動作(スタンドアローン)型VR用HMD「Oculus Quest」(以下、Quest)である。Questの特徴は4万9800円(税、送料込みの同社オンラインストアの価格)からとリーズナブルな価格ながら、機材を用意するのにトータルで10万円強必要だった「Oculus Rift」など従来の接続型のVR用HMDに匹敵する機能や性能を持つことだ。しかもPCやゲーム機などの外部機器との接続が不要なスタンドアローン型なので、電源を入れればいつでもどこでもすぐ使える手軽さもある。

「Oculus Quest」の外観(写真左)とコントローラー(同右)
単体で動作するため、外部機器に接続するケーブルは必要ない。(撮影:スタジオキャスパー)
[画像のクリックで拡大表示]

このHMDなら知り合いに勧められる

 機能の面で言うと例えばQuestは、HMD本体とコントローラーの両方が「6DoF(Degrees of Freedom)」に対応する。ヨー/ピッチ/ロールの3軸の回転に加えて、3方向(X軸とY軸、Z軸)の直線移動を検出できるので、しゃがんだり上半身を反らしたりといった動作もが検出できる。装着者の体や手の動きをVR空間内の映像に反映できるため、デジタル空間に没入するVRならではの体験を提供できるようになる。

 記者がQuestを体験して素晴らしいと感じた点の1つが、この「VR空間内で自分の“手”が動かせる」ことである。VR体験の楽しさは、VR空間内で実際に体を動かせることから生まれる没入感にあるが、その当然の体験を手ごろな価格で、手間のかからないスタンドアローン型で実現できているのがQuestの画期的な点なのだ。

 スタンドアローン型のVR機器の多くはこれまでスマートフォン(スマホ)ベースの製品がほとんどだった。1つにはスマホをはめ込んで使用する簡易型HMD。サムスン電子の「GearVR」シリーズなどが代表的な例だ。これらは安価ではあるが光学設計が専用でない分、映像体験の質が落ちるほか、スマホのプロセッサーの処理性能の制限で、高品質な3Dモデルや素早い動きをコンテンツ内に反映したりするのが難しい側面があった。

 2018年に3万円を切る価格で登場したスタンドアローン型VR用HMD「Oculus Go」(以下、Go)はこうした課題を解決し、スマホベースの回路や部品を使って低コスト化しつつ光学設計を最適化して映像体験の質を高めていたが、頭部のヨー/ピッチ/ロールの3軸の回転を検出する「3DoF」にしか対応できていなかった。中国レノボ(Lenovo)の「Lenovo Mirage Solo with Daydream」や台湾HTCの「VIVE Focus」など、HMD本体については6DoFに対応したスタンドアローン型も2018年にいくつか登場したが、コントローラーは3DoF対応に留まっていた。

 HMDとコントローラー両方の6DoF対応は、フルスペックのVRコンテンツ開発者からすると必須の機能である。細かいところだがQuestは、IPD(瞳孔間距離)調整機能に対応したり、フェースクッションの内側でレンズとの間のスペースが広がって眼鏡を付けたままでも装着しやすくなったりと、使いやすさの点でも気配りが抜かりない。あるVR技術者は「この性能、この価格なら大手を振って知り合いに勧められる」と話す。本格的なVR体験が楽しめる「VRHMD普及の第一段階」となる製品がようやく登場したと言えそうだ。

この先は有料会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら