車両の“足”であるタイヤから、進化の「足音」が聞こえてきた。次世代の車両技術「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」に自動車メーカーが対応を急ぐ中、コネクテッドと自動運転の領域を中心にタイヤは価値を高めていく。

 2020年ごろからは、タイヤに取り付けたセンサーで路面の状態を検知し、車両制御に活用できるようになる。2025年をめどに、路面の状態に合わせてタイヤは自動で形状を変え、走行性能をタイヤ側で向上できるようになりそうだ。これまで「黒いゴムの塊」だったタイヤが進化を遂げ、自動運転の機能を向上する重要部品に躍り出る。

 タイヤは車両を構成する3万点もの部品の中で、唯一路面と接している。このため、カメラなど他の手法に比べて路面の状態を高精度で判別しやすく、自動車メーカーはタイヤをセンサーとして活用する術を模索している。世界上位のタイヤメーカーは需要の拡大を追い風に、付加価値を高めた「賢いタイヤ」の開発を加速し、台頭するアジアの新興メーカーを振り切りにかかる。

 「自動運転に対応した新たなタイヤ技術だ」――。2019年7月初旬、ドイツ・コンチネンタル(Continental)の技術役員は胸を張ってこう語った。同国ハノーバーで開催した技術発表会の一幕である。

 技術説明会でContinentalが披露したのは、開発中のタイヤ技術「Conti Adapt」だ(図1)。クルマの走行性能に悪影響を与える路面の凹凸や滑りやすさなどを検知し、内部の空気圧を制御する。空気圧の制御には、ホイールに内蔵した電動コンプレッサーを使う。

図1 Continentalが開発中の空気圧を可変するタイヤ「Conti Adapt」
電動コンプレッサーで内部の空気圧を制御し、路面の状態に合わせて接地面積を変える。接地面積を大きくすればグリップ力が高まり、小さくすれば転がり抵抗が下がって燃費が向上する。(撮影:日経Automotive)
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 タイヤの空気圧を下げれば、接地面積が大きくなり、グリップ力が向上する。曲がる・止まるといった車両性能が高まる。一方で、空気圧を上げれば接地面積は小さくなり、転がり抵抗が下がる。燃料消費量の削減に貢献可能だ。

前方の路面状態は他車両から入手

 ただ、タイヤが検知できるのは走行中の路面の状態だけだ。車両が積雪や凍結で滑りやすくなった路面に侵入してからタイヤの制御を始めても遅い。この課題を解決しようと、Continentalは自社で手掛ける「eHorizon」と呼ぶコネクテッド技術を活用する。

 前方を走る車両から、路面の状態をコネクテッドで吸い上げ、位置情報と一緒にクラウドに蓄積する。この地図データを基に、どの道路が滑りやすいかを車両が事前に把握し、タイヤの空気圧を自動で制御することを目指す。

 Continentalは「実用化の時期は未定」としているが、緊急時のみ乗員が運転を担うような自動運転車両が続々と登場するであろう2025年ごろには、Conti Adaptを市場投入する可能性が高い。カメラやミリ波レーダー、LIDAR(レーザーレーダー)といった同社が手掛ける車載機器とタイヤの技術を組み合わせれば、自動運転に必要な道路情報の大部分を握れると見る。

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