製薬企業とベンチャーの提携相次ぐ、アプリと医薬品の併用療法を視野

2019/07/04 05:00
高橋 厚妃=日経 xTECH/日経デジタルヘルス

 アプリなどソフトウエアを活用して治療する「デジタルセラピューティクス」(Digital Therapeutics:DTx、デジタル治療)。欧米などでは新興のベンチャー企業が増えており、製品を実用化したり資金調達に成功したりしている(関連記事:米国で先行する「デジタルセラピューティクス」、治療の選択肢が拡大)。

 最近では製薬企業が、DTxの開発に積極的に乗り出している。精神や中枢神経系などのように、医薬品だけでは治しにくい疾患が存在するためだ。医薬品とDTxを併用することで治療の効果を高める狙いがある。

 2018年3月には、大手製薬企業のスイス・ノバルティス(Novartis)が、DTxの開発を進める米Pear Therapeuticsとの提携を発表した。精神疾患である統合失調症と中枢神経系に病変が生じる多発性硬化症のDTxに関して共同開発を行う。一般的に医薬品の開発では、ベンチャー企業と、豊富な資金と人材を保有する大手製薬企業が組むと実用化が進みやすい。同様に、製薬企業が開発に参入したDTxはその実用化に弾みがつくと考えられる。

大塚と塩野義がそれぞれ米ベンチャーと提携

 DTxに注目するのは、欧米の製薬企業だけではない。2019年に入り、DTxを開発するベンチャー企業と共同開発契約を締結する日本の製薬企業が出てきた。精神や中枢神経系の疾患の医薬品を手掛ける大塚製薬と塩野義製薬だ。両社はそれぞれ、自社の開発経験や営業体制を生かしてDTxに参入する。

 精神・神経領域の疾患に注力する大塚製薬は2019年1月に、大うつ病性障害を対象としたDTxを開発する米Click Therapeuticsと提携したと発表した。Click社が開発するDTx「CT-152」は、独自のトレーニング法が搭載されたアプリ。アプリを利用すると、患者の短期記憶が強化され、うつ病に対する改善効果を示すと考えられている。

 本格的な臨床試験の前に実施した小規模な臨床試験では、患者がアプリでトレーニングを6週間実施した場合、うつ病の回復を示す指標のスコアが統計学的有意差をもって改善したという。大塚製薬の米子会社であるOtsuka Americaが、CT-152の全世界での開発と販売を行う。承認申請を目指し、2019年後半にも米国で臨床試験を開始する予定だ。

 一方で、ベンチャーの米Akili Interactive Labsと提携した塩野義製薬は、小児の注意欠陥・多動性障害(ADHD)を対象としたDTx「AKL-T01」を開発する。2019年度に日本で臨床試験を開始する予定だ。既に米国では、提携先のAkili社が米食品医薬品局(FDA)に承認申請を行った。

図1:米Akili Interactive Labsが開発するDTxのイメージ
2つの課題を同時に行うことで、大脳に刺激を与えて注意機能を改善すると期待されている。(図:日経 xTECH、画像出所:Akili Interactive Labs)
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 AKL-T01は、タブレット端末などを利用して課題をクリアしていく形式のアプリ。認知機能において重要な役割を果たすとされる、脳の前頭前野を活性化するように設計されている。具体的には、アプリで同時に2つの課題に取り組んでもらう(図1)。例えば、キャラクターを動かして障害物を避けながら、画面に現れる複数のキャラクターの中から特定の標的だけにタッチする。大脳に刺激を与え、注意機能を改善できる可能性がある。

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