本記事は「日経xTECH」2018年5月18日号のニュース解説「『黒煙の怖さに這って逃げた』、火災のリアルが体験できる避難訓練VR」を再構成したものです。

 火災の発生を知らせる警報が工場に鳴り響いた。倉庫の扉を開けて廊下に逃げ出すと、照明が消えていた。胸の高さから上は黒煙が充満して視界が遮られる。ひざまずいて見上げると、ぼんやりとした誘導灯の明かりが見えた。避難する方向を確認して這(は)うように進む。突然、背後でガガッと音を立て天井が崩落した。思わず、「うわっ」と声が漏れる。

理経の避難訓練VRシステムで体験者が見る光景
工場火災が発生した想定で、正しい避難姿勢を身に付けられる(出所:理経)

 これは、全国瞬時警報システム(Jアラート)の受信システムなどを提供する理経(東京都新宿区)の工場向け避難訓練用VR(仮想現実)システムの内容だ。VRヘッドマウントディスプレーを装着すると、火災の真っただ中に置かれた怖さを体感できる。

理経が避難訓練用VRシステムに採用したレノボ製のスタンドアロン型VRヘッドマウントディスプレー
狭い場所などで使用する場合はコントローラー(右手)を操作して進むこともできる
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 理経の石川大樹新規事業推進室室長は「VR機器を使うことで避難訓練の質が変わる」と話す。

 従来の避難訓練VRシステムは一般に、スマートフォンをはめ込んだゴーグルをヘッドマウントディスプレーとして使うタイプが主流だった。このタイプだと体験者が顔の向きを変えることによりVR空間で上下左右に視点(視線の先)を変更できるが、物理的に歩いたりしゃがんだりしてもVR空間では視座(目の位置)が固定されたままになる制約があった。この課題を解決するため、理経はレノボ・ジャパンのスタンドアロン型VRヘッドマウントディスプレー「Lenovo Mirage Solo with Daydream」を採用した。

 このVRヘッドマウントディスプレーは顔の向きに加え、前後左右の移動、しゃがんだり跳ねたりする上下の移動を認識する「6DoF」(6 Degrees of Freedom、6軸の自由度)と呼ぶ技術に対応する。これにより物理的な体の動きがVR空間で再現され、「しゃがんで黒煙を避ける」といった正しい避難姿勢のシミュレーションができる。しかもリアリティーが増して「実際の火災の恐ろしさを感覚的に伝えることができる」(石川室長)。

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