医療データ交換を促す標準規格の本命、「FHIR」への対応が急務に

2019/08/30 05:00
遠山 仁啓=アマゾン ウェブ サービス ジャパン パブリックセクター 技術本部 シニア ソリューション アーキテクト

 医療機関がAIや機械学習を積極的に活用する時代が到来した。AIや機械学習は、精度向上のために大量のデータを学習させる必要があり、医療機関同士の医療データ連携の重要性が高まっている。一方で医療機関は健全な病院運営がこれまで以上に求められていることから、こうしたデータ連携のコストも削減する必要に迫られている。そのため海外では、医療データ交換を促す標準規格の対応が活発化している。

 AIを活用した先駆けとして、米国のスタートアップのArterys(アルタリス)の診断ソフトウエアが有名だ。2017年にクラウドとAIを活用した診断ソフトウエアとして、世界で初めて米FDA(Food and Drug Administration:食品医薬品局)の認可を受けた。

 アルタリスのソフトウエアは、膨大な心臓MRI(磁気共鳴画像装置)データをクラウド上に蓄積し、AIで診断を支援する。複雑で時間がかかり、高い専門性が求められる心疾患の診断補助にAIを活用した。心臓の形状や動きを診断するのに1時間近くかかっていた作業が、数十秒で終わり、より正確で一貫性のある診断ができるようになった。

 スタートアップだけでなく、大手企業もAIの活用に動いている。医療機器メーカーの米GE Healthcare(GEヘルスケア)は、創業者であるトーマス・エジソンの名を冠したAIプラットフォーム「エジソン」を提供している。医療機器から取り込んだ膨大なデータを整理し、機械学習により精度を高めたうえで、頭部MRIの撮像自動化や、X線撮影装置での気胸検出の診療支援、読影の優先順位付けといったワークフロー改善などのソリューションを提供している。これらは既に実装段階に入っており、いずれもFDAに申請中だ。

 このほかに病院における機械学習活用の先進事例として、米ハーバード大学の附属病院の1つである「Beth Israel Deaconess Medical Center(ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカル・センター、以下BIDMC)」を紹介したい。BIDMCは米国におけるヘルステックの進展をけん引する病院として高い評価を得ている。

 BIDMCは2019年3月、患者へのサービス向上と経営効率の向上を両立する次の3つの革新的な研究プログラムを開始した。(1)機械学習活用による手術室のスケジュール最適化、(2)患者の再入院率を予測して490を超えるベッド稼働率の最大化、(3)外来患者の来院予測、である。

 世界的に見ても、最先端のAIや機械学習のサービスを取り入れて、病院運営の課題解決を実践している病院は、BIDMC以外に例を見ない。患者の入院や連携先医療機関への移動、手術の計画、退院などの変数を含むデータを分析し、いつどこで院内の治療室やベッドが解放されるかを予測する。これらの研究プロジェクトは、将来における医療機関のイノベーションのモデルケースになるだろう。

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