AI(人工知能)スタートアップのPreferred Networks(PFN)は日本を代表する「デカコーン企業(企業価値が100億ドルを超える未上場企業)」予備軍だ。従業員数は200人ほどながら、上場すれば時価総額は1兆円を超えるとの報道もある。

 これまでPFNはトヨタ自動車やファナックなど大企業との共同研究に伴う開発委託を収益の柱にしてきた。現在はこれに加え、自社開発した製品・サービスの提供やレベニューシェアなど、成長に向けた新たな事業モデルを模索している。

自社開発製品を収益の柱に

 これまでの収益の柱は深層学習技術を軸とした大企業との共同研究だった。今後はどのような事業で収益を上げていくのか。西川徹社長は「特定のリスクに左右されない態勢を築くため、事業ポートフォリオを積極的に広げている」と話す。自社開発の製品やサービスを販売する事業を拡大し、全社の売上高に占めるパートナーとなる大企業との共同開発による収益との比率を「いずれはひっくりかえしたい」(同)。

Preferred Networksの西川徹社長
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 西川社長は「PFNを立ち上げた頃の社員が少ない段階では、事業や研究の領域を絞るのが正しい戦略だった」と説明する。ただパートナー数社に収入を依存していては、産業ごとの景気の波の影響を受けやすくなる。現在は社員数も増え、収益構造を安定させる必要性が高まっているという。

 2018年に始めた外観検査ソフトウエア「Preferred Networks Visual Inspection」に続き、化学・エネルギー事業、バイオ・医療事業、ロボット事業について、独自の製品・サービスを開発する。バイオ・医療事業は、2年後を目標に研究開発の成果を商用化するという。日本市場はディー・エヌ・エー(DeNA)、海外市場は三井物産とそれぞれジョイントベンチャーを組み、収益をシェアしながら市場を開拓する事業モデルを模索する。

 既にコア技術はできあがっており、当局の承認を得るためのプロセスを進めている。DeNAとは商用化に向けたラボを都内につくり、必要な設備を整えている。

 化学・エネルギー分野も成長余地が大きいとみる。天然ガスや石油などの分野は、マテリアルズインフォマティクス(MI)と深層学習を組み合わせた手法について重点的に研究している。「近い将来、商用化に向けた取り組みを発表できるだろう。パートナーなど詳細はまだ言えないが、こちらもPFNの収益の柱になると考えている」(西川社長)。

社内プロジェクトは自然発生、「計算機に稼がせる」

 同社はほかにも、線画に自動着色する「PaintsChainer」や、キャラクターを自動生成する「Crypko」、Sports Technology Labとのサッカー戦術分析ツール「PitchBrain」の共同開発など、個性的なプロジェクトを相次ぎ発足させている。

 「多くのプロジェクトは現場から自然発生的に立ち上がっている」(西川社長)という。社内のエンジニアが「これをやりたい」と強い熱意で提案して賛同者を集め、ビジネスサイドの社員も「これは事業になりそうだ」と判断すれば、プロジェクトとして立ち上がる。

 スーパーコンピューター「MN-1」「MN-1b」「MN-2」など自社専用の計算インフラを整備し、さらに深層学習向け専用チップまで自社開発している。

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