日本航空(JAL)は現在、主に第5世代移動通信システム(5G)、IoT(インターネット・オブ・シングズ)、xR(VR=仮想現実とAR=拡張現実、MR=複合現実の総称)、AI(人工知能)、ロボティックスという5分野を中心に、旅客サービス向上や業務改善に役立つ「地に足の着いたイノベーション」(西畑智博常務執行役員イノベーション推進本部長)に取り組んでいる。

JALの西畑智博常務執行役員イノ ベーション推進本部長
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長期と短期のゴールを設定

 デジタルイノベーション推進部を率いる斎藤勝部長は「部員にはそれぞれがやりたいと考えるアイデアについて、長期と短期のゴールを定めてもらう」と話す。アイデアが将来の事業や利益に結び付きそうだと感じられ、長期と短期のゴールを設定できる場合にプロジェクトを始めるという。

JALの斎藤勝デジタルイノベーション推進部部長
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 短期のゴールは3カ月単位だ。長期のゴールにたどり着けるような画期的なイノベーションは簡単にはできない。そのため3カ月単位で区切って面談し、目標を微調整しながら着実に進めていく手法を採る。

デジタルイノベーションの進め方
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 同部を統括するのが2018年まで4年にわたり旅客系基幹システムを刷新する「SAKURAプロジェクト」をけん引してきた西畑常務執行役員である。同プロジェクトでもメンバーが数年先にある「ゴール」を見失わないように、全員と3カ月ごとに面談して目標設定と振り返りを実践していた。大規模プロジェクトを成功裏に導いたマネジメント手法をデジタルイノベーションでも生かしている。

「PoC屋」にならない

 斎藤部長は「アイデアを早く形にすることにもこだわっている」と話す。アイデアが頭の中にある状態では、社内外の第三者が理解したり評価したりできないからだ。

 アイデアが粗削りでもひとまず3カ月でプロトタイプを作成し、動くものであれば実証実験に進む。すぐに実用化できるプロトタイプばかりではないが、それでもよいという。「形にして評価されればイノベーションになる。そこまでいかなくても、気付きを得て次に進めるならばPoC(概念実証)は失敗でもいい」(斎藤部長)。

 ただ、どんな案件でもPoCを許すわけではない。斎藤部長は新しいことをPoCと称して宣伝するだけの「PoC屋」にならないようにしているという。「製品を買ってきて導入するだけなら現場の各部門がやればよい。我々が扱う案件にはアイデアが必要だ」と話す。

 デジタルイノベーション推進部の部員は現在20人弱だ。大半が30歳前後と若く、グループ会社からの出向者が4割ほどいる。「発想力は年配社員より、これから未来をつくっていく人のほうが豊富だ。現場主義でテクノロジーによる課題解決を進めていく部署なので、現場の人もしくは現場に近い人が適している」(斎藤部長)。

 各現場の社員を同部に異動させる際の選定基準について、斎藤部長は「明るくてやる気があり、テクノロジーに抵抗がない人。そして自身のモチベーションによって新しいことを切り開いていける人」と明かす。実務の能力やテクノロジーの知識は同部に異動してくる時点では特に求めていない。

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