住宅の省エネルギー基準に関する現在の通説では、夏型結露(逆転結露)について「過度に懸念する必要はない」としている。だが近年は木造住宅で、夏型結露に起因して壁内にカビの繁殖や木材の腐朽を生じるトラブルが各地で見つかっている。

 夏型結露の通説は、基準の作成に関わってきた研究者らが1980年代後半に、健全な建物を前提とするシミュレーションなどを通じて結論付けた考えがベース。近年のトラブルの多くは、建築中の雨掛かりや完成後の雨水浸入などによって、壁内の木部が一定以上の水を含んでいたことが原因とみられている。通説の根拠になったかつての研究では、想定していなかった結露原因だ。日経 xTECH/日経ホームビルダーは専門家に協力を仰いで、こうした結露現象の再現実験を独自に実施した。

〔図1〕夏型結露は防湿層裏面(壁内側)で生じる
冷房が利いているなど室温が外気より低い状況で、室内側の防水層(図の「防湿シート」)が冷やされて結露する。これが夏型結露のメカニズムだ(資料:日経 xTECH)
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 「日射で外壁や屋根が暖まり、住宅外皮を構成する合板などの多孔質な建材が、含んでいた水分を放出。室温が、屋外や壁内の露点温度を下回った環境では、壁内で室内側の面に結露する。外気温が下がり室温の方が高くなる夜間は、結露水が蒸発して建材が再び吸収する」。これが夏型結露のメカニズム。冷房で室内が冷えている夏に起こりやすいことが、呼び名の由来だ。冬型結露は室内の空気中に含まれる水蒸気が断熱層の屋外側で結露するのに対して、夏型結露は、断熱層の室内側にある防湿層裏面(壁内側)に生じる〔図1〕。

 「木造建築で繊維系断熱材を採用する際に、冬型結露対策として設置する防湿シートは、温暖地では夏型結露を招く原因になる」。結露問題に詳しい土屋喬雄・東洋大学名誉教授をはじめとする複数の研究者が、1980年代後半から指摘していた問題だ。しかし結露の影響について、土屋名誉教授ら研究者は当時、「外壁通気層あり、壁体は乾燥材を使用」という条件によるシミュレーションを踏まえて、「夏型結露は発生するが、年間を通じた発生期間は数週間程度にとどまる」と結論。この見解が通説化し、最も定番の解説書にも「過度に夏型結露を懸念する必要はない」と付記された経緯がある。

 実際、壁内の結露によるカビの繁殖や木材の腐朽といった実際のトラブルは80年代後半当時、研究者や建築実務者の間で具体的には顕在化していなかった。近年、この種のトラブルが目立ってきた背景には、木造住宅の断熱・気密性能が飛躍的に向上してきたことがある。「設計の仕様は乾燥材なのに、なぜ所定の水準以上の水分を含んでいるのか?」。土屋名誉教授ら研究者や専門家は今日、「建築中の雨掛かりや完成後の雨水浸入などが原因」とする見解で一致している。

 そこで日経ホームビルダーは、夏型結露の再現実験を企画。実験は土屋名誉教授を監修役に、また住宅の結露トラブルに関する調査を多数手掛ける神清(愛知県半田市)に実験施設の提供と実大試験体の作成、測定作業などを依頼して実施した〔写真1〕。

〔写真1〕実験施設で実施
実験の監修役である土屋喬雄・東洋大学名誉教授(右)と、試験体作成と実験作業を依頼した神清の神谷昭範常務(中央)、盛田裕紀課長(左)。奥に見える建物が、神清の実験施設(写真:日経 xTECH)
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