2018、19年と2年連続で「世界一の富豪」となった米アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾスCEO(最高経営責任者)。流通業に続いてIT産業をディスラプト(破壊)したベゾス氏が珍しく「成功の秘訣」を雄弁に語った。「10年後も変わらないもの」こそを大事にしろと語る氏の成功哲学を紹介しよう。

 ベゾス氏が自分の思いを語ったのは、アマゾンが2019年6月上旬に米ラスベガスで開催したイベント「Amazon re:MARS」の基調講演でのこと。ベゾス氏は独特の言い回しでリーダーシップ論や宇宙開発、ビジネスパーソンへのアドバイスについて25分ほど熱弁を振るった。

熱弁を振るった米アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾスCEO
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 ベゾスCEOがまず語ったのは「夢想家(Dreamers)」と「建築家(Builders)」という人間の2面性に関してだ。世の中には夢想家タイプと建築家タイプの2種類の人間がいて、一人の人間の中にも両方のタイプが混在している。そしてそのどちらも重要だというのがベゾス氏の持論なのだという。

 「夢想家と建築家の構図はシンプルだ。最初に夢想家が建築家に夢を与える。夢想家とはSF小説家などのことで、実際に(音声アシスタントの)Alexa(アレクサ)は(SF映画の)『スタートレック』に出てくるコンピューターから着想を得た。そして建築家が夢を実現し、夢想家は建築家が築いた基礎に立って再び夢を描く」(ベゾス氏)

 「このように言うと(社会には)夢想家の集団と建築家の集団が別々にいると私が言っているように聞こえるかもしれない。しかしそうではなく、2つはしばしば1つの体の中に同居している。私たちは皆が夢想家であり、皆が建築家だ。それぞれに違う割合で配合されているが、私たちは皆、両方の能力を持っている」(同)

 「夢想し、建築し、そのサイクルが回転するのは非常に人間らしい能力だ。建築家が建物を建てるまで、夢想家は新しいものを夢見ることはできない。夢想家と建築家は互いに相手の肩の上に乗っているのだ」(同)

考えを頻繁に変えなければ間違いを犯す

 続いてベゾスCEOはアマゾンの「リーダーシップ原則」について言及した。同社はあるべきリーダー像として14個の原則を示しているが、ベゾス氏はその中でも「Are Right, A Lot」、「リーダーは多くの場合、正しい判断をする(Leaders are right a lot.)」という原則が一番のお気に入りなのだという。その真意をベゾス氏は次のように語った。

 「『多くの場合、正しい』を実践できているリーダーを観察すると、そこにはいくつかのパターンがあった。そうしたリーダーは他人の話をよく聞く。そして考えを頻繁に変える。政治家が頻繁に考えを変えるのは問題だが、リーダーにとっては必要なことだ。単に新しいデータを得たから考えを変えるだけではない。多くの場合、正しい判断ができるリーダーは、新しいデータがないときでさえも考えを変える」(ベゾス氏)

 「優れたリーダーは頭の中で物事の再分析を繰り返し、新たな結論に到達する。世界はとても動的だ。考えを頻繁に変えなければ、当然の結果として間違いを多く犯すことになる」(同)

 「『多くの場合、正しい』ができるリーダーは自制心を持つよう心がけてもいる。彼らは偏見を不当だとみなす。これは人間が自然にできることではない。なぜなら私たちは『選択的』に証拠を集めてしまいがちだ。自分が持っている偏見を裏付けるような証拠を探してしまいがちなのだ。これは人間らしい行為だが、それこそが間違いをたくさん犯す方向に自分を導いてしまう」(同)

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