情報システムをデザインする目的は、「良いUX(ユーザーエクスペリエンス)を生むこと」です。ではそれを実現するために、具体的に何に取り組めばよいのでしょうか。

 UXデザインに取り組む入り口として、UXをデザインする際によく用いられる「JJGの5階層モデル」があります。JJGの5階層モデルは、一番下から、戦略、要件、構造、骨格、表層という層構造になっています。各層は、情報システム構築の上流工程から実装工程への流れに当てはまります。

JJGの5階層モデルとシステム構築の工程
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 前回は、JJG5階層モデルのうち、1番下の「戦略」について解説しました。今回は要件、構造、骨格、表層の4層を解説していきます。

要件:良いUXを生む機能を考える

 JJG5階層モデルの下から2番目は「要件(scope)」層です。これは、戦略を実現するために「どのような機能をどのように提供すると良いUXが生まれるのか」を考えるフェーズです。単にシステムの機能を考えるのではなく、ユーザーのやりたいことを実現するために、機能のあるべき姿を考えることが大切です。

 検索機能の検討を例に、より良いUXについて考えてみましょう。あるシステムに検索エンジンを導入することになりました。導入する検索エンジンは様々な種類の検索が可能な多機能な製品です。

 そこで担当のITエンジニアは、検索エンジンで実現できるすべての検索機能を実装しようと考えました。可能な限り多くの種類の検索機能を提供することで、多くのユーザーの要望を満たせると考えたからです。しかしシステムの運用が始まると、多くのユーザーは、検索機能の使い方が分かりませんでした。検索エンジンが持つ専門用語のまま、数多くの検索機能を提供した結果、ユーザーは見つけたいものを見つける方法が分からなかったのです。

検索に対する意識の不一致の例
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 この例からも分かるように、ユーザーは必ずしも高度で多数の機能を求めているわけではありません。ユーザーがどのような目的でシステムを利用するかを把握し、それを機能へ落とし込むことが重要です。また、ユーザーがどの程度ITに詳しいかを把握することも、利用しやすい機能の提供につながります。

 システム構築においてこの層は、ユーザーへの提案から、機能・要件定義工程に相当します。自らシステム化を決めて推進する企画型のプロジェクトであれば、戦略の層で策定された方針やユーザー調査の結果を受けて、その方針を実現する機能や要件を検討することになります。受託開発のような受注型のプロジェクトの場合は、受け取ったRFP(提案依頼書)で求められていることが、システムへの要望となります。

 例えばハードウエアの保守切れに伴うシステム更改のプロジェクトの場合、ハードウエアのリプレースが新システム構築の主な目的であり、ユーザーに対する利便性の向上に関する具体的な記載がRFPにないケースがあります。するとRFPを受け取ったITエンジニアはハードウエアの検討に集中します。しかしここでユーザーの存在を忘れてはいけません。ユーザーはどのようにシステムを利用して、何を行いたいのでしょうか。

 ユーザーに目を向けるために、戦略の層で定義されたユーザー像やユーザーのサービス利用状況などに対して、新しいシステムがどのような体験を提供するかを考えていきましょう。

 ユーザー像がなかった場合は、できる範囲で想定ユーザーを描き、ユーザーが抱えていそうな問題と、新しいシステムがそのユーザーにどのような良いUXを提供できるかを想像してみましょう。もしかしたら、想定していなかった「ユーザーが本当に必要としている要件」が見つかるかもしれません。併せて、アクセシビリティーやユーザビリティーに関する要件も、忘れず検討しておきましょう。

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