システム開発プロジェクトでは、社内、社外によらず多様なステークホルダーが関わります。社内に限ったとしても、PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)を始め、品質管理担当、内部統制担当、リスク管理部署など様々です。

 彼らが自分たちの役割を果たそうと要求してくることが、PM(プロジェクトマネジャー)にとってはプロジェクトの進行を妨げる阻害要因としか思えないことは少なくないでしょう。実際に、そうした社内のステークホルダーが原因で、プロジェクトの進行が遅れてしまうことがあるかもしれません。以下ではそんなトラブル事例を見ていきましょう。


 邪魔だ。PM(プロジェクトマネジャー)の赤井竜馬は思った。赤井の視線の先では、PMOの藤川謙一が、得々としゃべっている。

「WBS(Work Breakdown Structure)はプロジェクトの基本だよ。こんな粒度が荒いWBSでは管理できませんよ。それから品質計画が薄いね。品質状況を計数管理して改善につなげなくちゃいけない。変更管理プロセスについては…」

PMOは邪魔な存在としか思えない
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 赤井は唇をかんだ。彼の会社のPMOスタッフは、いわば「上がり」のポストだ。役職定年に達したベテランがプロジェクト推進部に配属され、PMOスタッフを務めることが多いのだ。だからそれなりに経験豊富でスキルも高い、…ことになっている。しかしぶっちゃけ、口うるさくて人の話をきかないタイプが多い。藤川審査役はその典型だった。

 WBSの整備が不十分なことは、赤井にも分かっている。品質計画に穴があることも、変更管理プロセスを顧客と合意しなければならないことも。だが、限られた要員で、やるべきことには優先順位がある。

 このプロジェクトで目下、焦眉の急なのは、課題整理とスコープ確定だ。要件定義期間中にスコープが膨張して、予算を大きく超過しそうになっている。顧客はそのことに不満顔だったが、ようやくスコープ調整のテーブルについてもらえることになったのだ。

 主要機能3つのスコープアウトを合意するために、暫定対応の案をまとめ、同時に大物課題解決のめどをつける。それが優先事項だ。プロジェクトメンバー全員が、そのことに全力を挙げていた。PMも例外ではない。現時点では、優先度の低いWBSや品質計画の整備に使う時間などない。少なくともここ1週間は。

 もっと言えば、こんな「プロジェクト会議」に出席している場合じゃないのだ。しかし藤川は、「それがルールだから」とプロジェクト会議を招集した。そして、一方的で何の役にも立たない主張をまくし立てている。

 赤井はこみ上げてくる怒りを抑えるのに必死だった。


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