プロジェクトには多様なステークホルダーがいるものです。発注する立場のユーザー企業とシステムベンダーであったり、利用部門と企画部門、情報システム部門が分かれていたり。組織が異なれば、立場や目的の違いが出てきます。時としてあつれきが生じ、プロジェクトが炎上します。立場の違いでユーザーとベンダーが一触即発。そんな事例を見ていきましょう。


 大村専務は、腕組みをしたまま厳しい声を出した。

「御社からは協力の姿勢が感じられません」

 PMの吉倉保は、突然出てきた強い言葉に、目をぱちくりさせた。今日のステアリングコミッティーの主要議題は、稼働までのスケジュール見直しだ。しかし、開発の遅れはベンダーである吉倉の会社だけの責任によるものではない。発注者である大村工業の利用部門にも、仕様確定と検証準備を遅らせてしまった責任がある。少なくとも、吉倉はそう考えていた。

「あのう。どういうことでしょうか」

 吉倉の問いに、大村専務は間髪入れずまくし立てた。

「これまで何度も、立て直しの策を提案してくださいとお願いしてきたはずです。このプロジェクトは、中期3カ年計画の一部で、我々にとって非常に重要なものだ。それなのに、御社から出てくる案といえば、スケジュールの見直しと追加コストの要求ばかりじゃないですか。御社にも、プロジェクトを着地させる責任があるんじゃないですか?ただ開発して、導入すればそれでおしまいというのが御社のお考えですか?」

 吉倉は唇をかんだ。

「当然、導入するだけで責任を果たせるとは思っておりません。御社のビジネスに役立てることが…」

 大村専務は手を振って、吉倉の言葉を遮った。

「だったらどうして、パッケージの仕様だからカスタマイズできないとか、運用で回避するしかないとかおっしゃるんですか?それに、どうして今になって、経理連動インターフェースの変更なんて話が出てくるんです?経理連動のことは、要件定義のときから分かってたでしょう?」

 吉倉は、平静な口調を保とうと心掛けた。

「経理連動インターフェースについては、もともと、連動ファイルのレイアウトが明確になればパッケージ基本機能で対応できる前提でした。しかし、ヘッダーレコードとフッターレコードが必要だということが先週分かったので…」

「だから何なんです?経理システムの資料は要件定義のときにお渡ししてるじゃないですか」

「それは…」

 吉倉は口ごもった。資料を受領していたのは事実だ。しかし、現行システムの仕様については顧客から明確に提示するという約束でもあったのだ。

「とにかく、御社からは、こうすればできるというスケジュール短縮や機能面のご提案を頂きたかった。この際だからはっきり申し上げます。我々に協力してくれる気もないのに費用の話ばかりされるのであれば、もう御社とは仕事ができません」

 大村はそう言って、吉倉をにらみつけた。


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