登場人物紹介

Biki(≒瀬川秀樹)
数年前までリコーに長年勤め、新規事業開発センター副所長や未来技術総合研究センター所長を歴任。現在はベンチャーから大企業まで幅広く新規事業のメンターや若手育成研修などを行っている。

(イラスト:勢川びき)
井野辺くん(井野辺祥雲)
大企業に勤める元エンジニア。入社10年目。現在は新規事業の立ち上げを行っている。

[♪オープニングの音楽♪]

Biki 深々とした夜の闇に心を休める時、いかがお過ごしでしょうか。大企業の中でいろんな壁にとらわれてモヤモヤしている若いアナタの背中を押す「ラジオ風コラム」の時間です。お相手は私Bikiおじさんと…。

井野辺 イノベ、ショーゥン、デス。

Biki お、その言い方だと井野辺翔雲ともイノベーションとも聞こえるね。

井野辺 練習しました! で、ついでに実はいただいているお悩みカードを下見してしまいました!

Biki えーっ、先に見ちゃったの?

井野辺 はい。一応、すいません。で、今日はぜひこちらで話をしたいと思いました!

Biki 反省も謝罪も全く感じないのがいいね。で、何?

井野辺 読みますね!

(カードを読み込んで再生された動画) 上司はキベさんと呼ばれている人です。実はこの人の本名は別にあって、キベさんというのは仲間内で噂をするための暗号名みたいなものです。なぜキベさんと呼ばれているかというと、「ベキ」が口癖だからです。会話の中にたくさんの「~するベキ」というフレーズが出てきます。聞いている多くの部下は「そりゃ分かっているけどさ、どうすればいいの?」みたいなことを「~するべきだ!」と大声で怒鳴り散らすだけなので、あきれて誰も反論もしなくなってしまいました。

井野辺 実は私も以前の部署の部長が同じキベさんでした。

Biki 同じ人ではなくて、同じような人ってことだろうね。

井野辺 はい。いいネーミングだなあ、って思って今日はこれを選びました。

Biki 名付け方に感心したのか…。ま、いいか。

井野辺 こういう人はたくさんいる気がします。

Biki そうだね。統計があるわけではないけれど、日本人に多い気がする。

井野辺 どうしてでしょう?

シリコンバレーでよくある会話

Biki 中途半端で「他人事(ひとごと)」だからだろうな。

井野辺 きたきた、訳が分からない抽象的な表現。そういうのがだいぶ好きになってきました。

Biki ついでに、これもいつもと同じパターンかもしれないけれど、パッと見、全く違う話から始めていい?

井野辺 あ、そのパターンも慣れてきました。パッと「見」でなくてパッと「聞き」ですね。

Biki 切り返しもうまくなってきたなー。

井野辺 おかげさまで。

Biki シリコンバレーのパーティーでよくある会話の話をしよう。

井野辺 それがどう「べき」の話につながるのか楽しみ~。

Biki シリコンバレーではいろいろなアントレプレナーやVC(ベンチャーキャピタル)が集まる立食パーティーがしょっちゅう開かれている。そこでよくある会話の話。

井野辺 初めて会う人同士の会話ってこと?

Biki そう。初めて会うのに、ほぼいきなり「What is your dream?(アナタの夢は何?)」と聞いちゃう。

井野辺 えーっ!日本だったらかなり変な人ですね。

Biki そうだね。でも聞かれる方も慣れているから、自分の大きな遠い夢を答える。例えば「人類の水問題を解決したいんだ!」とか。

井野辺 それも妄想系のかなり変な人に思われそう…。

Biki まあね。でも質問の意図に対してはそういう答えでいい。それで質問した方は「Great!(すげー!)」なんてリアクションして…。

井野辺 で、もっとよく分からない「でかい話」になる?

Biki いやいや、そうではない。むしろ逆。パーティーが金曜日だったとしたら「OK! Then what will you start next Monday?(じゃあ、〔その夢に対して〕来週の月曜日には何をするの?)」という次の質問を浴びせる。

井野辺 え? 何? 急に短期的な…。

Biki そう、超短期的、というか「今」の話題。でかくて遠い夢に向かって「今」は何をするのか、と問う。そして、「これまでウチの庭の芝にまいていた肥料をやめるのさ。排水の中の窒素成分を少しでも減らすためにね」とか、自分がすぐやることを言う。つまり、「自分事」。

井野辺 遠い夢と今やることか。

Biki その通り。それがアントレプレナー文化が浸透しているシリコンバレー的な考え方。「遠くてでかい夢」と「自分が今やる小さいこと」の両極端の端っこに思考や行動のパワーの重点を置く。