実はA氏、以前にユーザー企業のキーパーソンの信頼を失い、「彼をプロジェクトから外してほしい」と名指しされたことがあった。どうにかプロジェクトに残ったが、会議では発言機会さえ与えられず「精神的に極限まで追いつめられた」(A氏)。そんなときある自己啓発の書籍を読み、現状に悲嘆している自分がバカらしくなったという。「現状の厳しさも、先を見据えれば乗り越えるべき壁の1つに過ぎない」(A氏)と思えたのだ。

 そう考え方を変えたA氏は、個人の目標管理に取り組み始め、急速にやる気を取り戻していった。その後、先輩のITコンサルタントが相次いでそのプロジェクトから離脱したこともあり、終盤は顧客の信頼を得て中心的な役割を果たすまでになったという。

(出所:123RF)

成功のカギは目標の具体化

 A氏のように、自分の目標を設定することは、やる気を持続させるうえで非常に有効である。ただし自主的な個人の取り組みであるため、三日坊主に終わりやすいのも事実だ。

 そこで重要なのは、目標を可能な限り具体化すること。そして常日ごろ目標を再認識することである。A氏の場合、意識して具体的に目標を書き起こし、日々行動計画を振り返ることで再認識している。

 個人的な目標管理においては、こうした徹底ぶりが必要になるだろう。ただしもっと簡単に、具体化と再認識が可能な目標設定の仕方がある。それは、身近にいる人物を目標とすることだ。

 大手コンピューターメーカーのB氏は、同じ部署の部長を人物目標としている。「心底すごいと思える人物が直属の部長だった。日ごろ顔を合わすたびに『自分は5年後こうなるんだ』と思いを新たにし、やる気につなげている」(B氏)。

 周囲に全面的に尊敬できる人物がいなくても、人物目標は設定できる。基盤ソフトベンダーのC氏には、社内に人物目標が10人いる。コミュニケーション、プレゼンテーション、英語といった具合に、ジャンル別に最もスキルの高い人を目標としているのだ。

 「身近にいる人にもそれぞれ学ぶべきところがある。各人の長所を見つけて目標として設定することで、その人に会うたびに目標を再認識することになる。これが、自分もスキルを高めたいというやる気につながる」(C氏)。

出典:日経ITプロフェッショナル、2006年1月号 特集「ITエンジニアの『やる気』マネジメント術」を改題して本文を再編集
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