上司自身がやる気を出す

 最後に、極めて重要なことを1つ指摘したい。それは、上司自身がやる気を出さなければ、部下のやる気は上がらないということだ。

 先にも指摘したが、「最近、やる気が出ないんだ」「やる気なんてないよ」と言う上司のもとで、部下のやる気が上がるはずがない。言葉だけでなく、やる気のない態度もタブーだ。上司のため息は、部内の雰囲気を停滞させる。上司のちょっとした言動が周囲に与える影響を、強く自覚しておくべきである。

 ここで、部下と自分自身のやる気を同時に高める方法について1つアドバイスしたい。それは、会話やメールにおける言葉の表現を、意識してポジティブなものに変えることである。

部下のやる気をそぐ表現とその改善法
部下のやる気をそぐ言葉の典型的なパターンとその改善方法を示した。自分自身のやる気にもつながるので日ごろから言葉の表現方法に気を配りたい
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 例えば、否定文より肯定文を使う。「早く仕上げないと、納期に間に合わないんだよ」ではなく、「納期に間に合せたいので、是が非でも早く仕上げてほしい」と言う。「こんな状態では、どうせプロジェクトが予定通り終わらないんじゃないか」という後ろ向きな表現も、「この状態を早く立て直して、プロジェクトをきっちり終わらせたいね」とすれば前向きになる。

 「どうしてあのとき、気づかなかったんだ。一体何をやっていたんだ」と過去のことや後悔にばかり言及するのではなく、「原因を振り返り、今後に役立てていこう」と未来について言う方がポジティブになる。

 どれもちょっとしたことだが、ポジティブな表現を習慣化することで、自然と気持ちが前向きになるはずだ。その影響は確実に部下にも表れる。部下がやる気をなくしていたら、まず、あなた自身がやる気のない態度を取っていないかどうか考えてほしい。やる気は伝播する。部下はあなたのカガミでもあるのだ。

田中 淳子
トレノケート 人材教育シニアコンサルタント
日本ディジタルイクイップメントを経て現職。長年、人材開発の支援に携わる。『ITエンジニアとして生き残るための「対人力」の高め方』『ITマネジャーのための現場で実践!若手を育てる47のテクニック』『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』(全て日経BP社)など著書多数。産業カウンセラー、国家資格キャリアコンサルタント。ブログ「田中淳子の”大人の学び”支援隊!」。Facebookページ @TanakaJunko
出典:日経ITプロフェッショナル、2006年1月号 特集「ITエンジニアの『やる気』マネジメント術」を改題して本文を再編集
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。