鉄則ニ 仕事のビジョンや意義を何度も繰り返し語る

 ITエンジニアの専門分化が進み、一人ひとりの担当領域は、プロジェクト全体では小さな一部分になった。また、ユーザーからのコスト削減要求は厳しくなるばかりで、ときとしてユーザーの合理性を欠いた要求に応えざるを得ない。理想的なシステムを追求できる機会は、決して多くない。それだけに、ITエンジニアは仕事の意義を実感しにくくなっている。

 そうであればこそ、上司は部下に仕事の「ビジョンや意義」を示したい。ここで言うビジョンや意義とは売り上げを増やす、利益を伸ばすといった無味乾燥な目標ではない。言い換えると「目指すもの」や「想い」である。

 「中小企業の情報化を俺たちが支えるんだ」「この仕事を通じて、素材にまでさかのぼるサプライチェーンを実現したいんだ」「保守費用が最少になる柔軟なシステムを追求して、IT業界を変えていこう」──。こうしたビジョンや意義があれば、目の前の仕事がきつくても、その先を見つめてやる気を保てるのではないだろうか。

 もちろん、部門やチームのビジョンは勝手に自由に考えられるものではなく、会社の方針や顧客ニーズなどがベースになる。それでも「会社の方針がこうなったから」「ユーザーが言うんだから従うしかないでしょう」といった第三者的な言い方はタブーである。そんな言い方をされても、部下は前向きな気持ちになれない。背景状況を説明したうえで、「私はこうしたい」と自分を主語にして語りたい。

 さらに1回言って終わりにせず、何度も繰り返すことが重要だ。そうして初めて、上司の思いつきでなく「想い」であることが伝わる。部下のやる気を育てるには、自分のビジョンを少しずつ浸透させていく必要がある。

鉄則三 仕事を指示する際に目的や経緯を詳しく伝える

 「黙って言われたことをやればいいんだよ」――。ある若手エンジニアAさんは、上司からこう怒鳴られたことがあるそうだ。この上司は、指示する際に「これをやって」と言うだけで、仕事の目的やそれまでの経緯をきちんと教えないタイプらしい。あるときAさんが、「この仕事の目的は何ですか」と食い下がって尋ねたところ、上司の怒りを招いたのだという。

 どんな仕事でも黙々と取り組むのが若手のあるべき姿だと、上司は思うのかもしれない。しかし「何のためにやっているのか分からない仕事が一番きつい」とAさん。仕事の目的が分かったほうが、熱意を持って仕事に取り組むことができる。その傾向は、最近の若手ほど強いようだ。

 何のためにこの仕事をするのか。このことを部下に説明するのは、上司の責任の1つである。仕事の目的を明確にすることは、上司にとっても意味があるだろう。部下に指示を出す前に「目的は何か」を整理することを習慣化したい。

 また、鉄則二でも述べたが、目的もことあるごとに繰り返し伝えたほうがよい。「プロジェクトの最初に言ったから、分かっているはず」という上司もいるが、何カ月も前のことを正確に覚えていられるものではない。さらに言えば、プロジェクトに入ると現実に押し流されて、ややもすると本来の目的を見失いがちになる。目的の再認識は、やる気を高める。だからこそ、何度も繰り返すべきなのだ。