やる気の無い部下や後輩、やる気の出ない自分。それを会社のせいにしたり嘆いたりしても始まらない。部下や後輩のやる気が高まるように働きかけ、自分のやる気は自分でマネジメントする。その方法を、日経ITプロフェッショナルの過去記事を再編集して紹介する。

 大手システムインテグレーターで主任を務める鈴木さんは、若手SEの中島くんのことで頭を悩ませていた。中島くんはもともと、言われた以上のことをする「やる気のある若手」だったが、最近はその積極性が影を潜めてしまった。

 鈴木さんが思い当たるのは、2週間前のある出来事だ。その日、忙しかった鈴木さんのところに、中島くんが自分で作成した企画資料を持ってきた。「精いっぱいやったので、締め切り前に出来上がりました。査読をお願いします」「あっそう、じゃそこに置いといて」。こんなやり取りをした。

 鈴木さんが企画資料を査読できたのは、翌日の夕方だった。査読してみると、さほど悪くない出来だったが、いくつか修正点が見つかった。ちょうどそのとき中島くんは外出中で、帰社予定の時間も遅かった。「あいつも忙しそうだな。今から直させるのも酷か」。鈴木さんはこう考えて自分で修正し、部長に提出した。

 翌日、中島くんが声を掛けてきた。「この間の資料、見てくださいましたか…」。「ああ、あれね。いくつか問題があったけど、こっちで直して提出したから。感謝しろよ」。この言葉に、中島くんの顔色が変わった。「えっ、何でそんなことするんですか。問題があったなら言ってもらえませんか。自分で直しますよ」。中島くんが声を荒らげたので、鈴木さんもカチンときた。「こっちも忙しいんだ。君の都合にばかり合わせていられないんだよ」。こう突っぱねて、席を立った──。

存在を否定された気持ちに

 これは、筆者があるITエンジニアから受けた相談をベースにした話だ。よくある典型的な上司の勘違いを表している。

 鈴木さんは決して、いい加減な気持ちで部下を指導しているわけではない。中島くんのためと思ったことが裏目に出て、逆にやる気をそいでしまった。では、何が悪かったのか。それは、中島くんの視点に立てば分かる。

 中島くんにとってあの資料は、良いものにしようと必死になって締め切りより早く仕上げたものだ。しかし鈴木さんの反応は「そこに置いといて」という素っ気ないもの。あなたが中島くんなら、このときどう思うだろうか。ねぎらいの一言がないばかりか、上司が自分の作った資料に関心さえ示さないようでは全く報われない。

 しかも、上司の鈴木さんは自分に問題点をフィードバックせず、勝手に直して提出してしまった。この一連の経緯から中島くんは「鈴木さんは自分のことを信頼していないし、期待もしていない」と感じた。一人前として早く認められたいと頑張る中島くんにとって、耐え難く感じられたのだ。

部下の視点で考える

 上司やプロジェクトのリーダーが何気なく、部下やメンバーのやる気をそいでいることがある(以降では「リーダー」と「メンバー」および「先輩」と「後輩」の関係も、「上司」と「部下」で代表させる)。「自分は違う。部下に慕われているし、やる気も引き出している」と思ったあなた。日ごろこんなことを言っていないだろうか。

部下の「やる気」を損ねる何気ない言葉
悪気がなくても部下のやる気をそぐ言葉を吐いていることがある。日ごろから自分自身の言動に気を付けるべきだ
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 「いま暇でしょ。この仕事頼むよ。ほかにやってくれる人がいないんだ」「上が決めたことなんだから、やらないわけにいかないだろう」「俺、全然やる気が出ないよ」。

 どこの職場でも一度や二度聞いたことがある言葉だろうが、こんなことを言われた部下の身になってほしい。例えば「いま暇でしょ。この仕事頼むよ。ほかにやってくれる人がいないんだ」と言われた部下は、「上司は皆に断られたから仕方なく“暇”な自分に頼んでいる」と受け取るはずである。