米アップル(Apple)の開発者会議「WWDC 2019」が今年も米カリフォルニア州サンノゼで開催された。初日となる2019年6月3日にはCEOであるティム・クック氏をはじめとするエグゼクティブによるプレゼンテーションが行われ、各OSに関する最新アップデートのほか、プロフェッショナルユーザーらには待望だった「Mac Pro」の新モデルがついにお披露目された。

 内容的には盛りだくさんで、今後の同社のスマートフォン以外のコンシューマー戦略を占う「iPadOS」の存在をはじめ、いろいろ注目に値する発表があったと思う。筆者はモバイル決済にフォーカスしたジャーナリストであり、基調講演ではほぼ触れられることのなかったNFC(Near Field Communication)と決済に関するアップデートに着目したい。

さらに機能開放の進むNFC

 前述のように、今回のWWDCの基調講演ではApple Pay(Wallet)やNFCに関する話題は直接は触れられていない。会期最終日に当たる6月7日に「Core NFC Enhancements」の表題で行われたセッションで、主にiOS(iPhone)におけるNFC関連のアップデート情報がまとめられている。

 「Core NFC」はNFCに対応するiOSデバイス(現状ではiPhoneのみ)において、NFC機能の制御を行うフレームワークの名称だ。基本的にはNFCが備える3つのモード(カードエミュレーション、リーダーライター、ピアツーピア)のアプリからの中継を実施する。ただし2017年のWWDCで最初にCore NFCが発表された際、その制限はかなり大きいもので、本来の意味での「NFC」からは幾分か引いた状態だった。

「Core NFC Enhancements」で公開されたスライドの1枚。NFC機能のデモを実施した
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 今回発表があったiOS 13でアップデートされる前の、つまり現在のCore NFCにおける主な制限は下記の通りとなる。

・NFCタグ並びに内部のNDEF情報は読み取りのみに制限されており、書き込みはできない
・NFCタグ内のUIDの領域は読めない
・NFCタグの読み取り(つまりリーダーライターモード)をサポートするのはiPhone 7以降の機種
・iPhone XS/XS Max/XRより前の世代の機種はバックグラウンドでタグ読み取りが行えない(NFC読み取り機能を持つアプリを必ずフォアグラウンド状態で動作させなければならない)
・上記以外のNFC機能や動作モード(カードエミュレーションとピアツーピア)はサポートされない

 このうち機種依存の部分と動作モード以外の機能では制限が大幅に緩和されており、特にリーダーライターモードの強化が行われている。アップル関連のニュースサイトであるMacRumorsが紹介しているが、2019年5月に開催されたTRANSACTというイベントでApple Pay担当役員であるジェニファー・ベイリー氏がNFCタグ読み取りの制限を緩和し、アプリなしで同機能の利用が可能になることに触れている。一部パートナーとの提携で電動シェアスクーターやパーキングメーターに設置されたNFCタグにiPhoneをタッチするだけでApple Payによる支払いが行えるようになるという。

 さらに、Androidデバイスではすでに利用可能だった「NFCタグに機能をあらかじめ登録しておきワンタッチで特定の動作(例えば音楽再生など)を再現」「NFC対応機器とペアリング」といった仕組みがiPhoneでも利用できるようになるかもしれない。

 まだ実際にリリースされて対応アプリなどが出そろうまでは不明な部分が多いが、iPhone内で“鍵”で保護された「セキュアエレメント」と呼ばれる領域へのアクセスとカードエミュレーションを除けば、リーダーライターモードの仕組みのほとんどと、ピアツーピアモードの基本的な部分については、ほぼ開放されつつあると考えていい。

 Androidにおいては、ピアツーピアモードの代表的機能である「Android Beam」廃止の話が出て久しく、すでに開発者らはこれらNFCを使ったエコシステムへの関心を失いつつある。その一方で、アップルによる参入が新たな開発者流入を動かし、新しいアプリケーション登場に向けた新たな活性化材料となるかもしれない。

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