社会的な要請から全国で整備が急務となっている保育施設。配慮を重ねて設計しても音のトラブルに巻き込まれるケースは多い。神戸市の認定こども園の事例から、耳に配慮した設計の難しさが分かる。

 保育施設から発せられる音を巡り近隣住民から訴えられた神戸市の認定こども園「魚崎COCORO(ココロ)」。事業者は大幅な設計変更や遮音フェンスの設置で配慮を重ねたものの、音に関する両者の見解の違いは解決に至らなかった。

 子供が遊ぶ声は騒音なのか。2006年4月に開園した魚崎COCOROでは、騒音対策を巡って近隣住民と最高裁判所まで争った。同施設の事業者である社会福祉法人鶯園(うぐいすえん)の小林和彦常務理事は、「近隣への防音対策を徹底したうえで園庭の位置を移す設計変更もした。それでも、園児の声がうるさいと言われ、裁判に発展した」と話す〔写真1〕。

〔写真1〕境界に3mの遮音フェンス設置
神戸市の認定こども園「魚崎COCORO」の園庭。奥に見える高さ3mの白いフェンスは遮音性能を備える。園庭で遊ぶ子供の声が騒音であるため対策せよ、と周辺に暮らす男性から訴えられて最高裁判所まで争った。周辺には六甲ライナーや阪神高速道路などがあり、そもそも騒音が絶えない地域だった(写真:鶯園)
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 裁判が始まったのは14年6月、同施設近隣の男性が鶯園を相手取り、騒音による慰謝料100万円と保育施設からの騒音が50dB(デシベル)以下になるような防音設備の設置を求めて、神戸地方裁判所に提訴した。17年2月、神戸地裁は保育施設から発する音について、「一般生活上、受忍すべき限度を超えていない」と判断。原告男性の訴えを棄却した。

 地裁判決を不服とした男性は大阪高等裁判所に控訴。大阪高裁は保育施設の公益性や事業者による周辺地域への対応などを考慮したうえで、「環境基準および騒音基準に照らしても大きな問題は指摘できない」との理由で地裁判決を踏襲した。

 同年12月に最高裁判所が上告を棄却したことで、原告男性の敗訴が確定している〔図1〕。事業者は裁判に勝ったものの、原告男性から営業活動の妨害を受けるなど、トラブル収拾に大変な労力を必要とした。

2004年7月 保育施設の新設に関する説明会を開始
2004年~2005年 建設予定地に面する周辺住宅の窓を事業者負担で二重サッシに
敷地南側の園庭を北側に設計変更
敷地北側に高さ3mの遮音フェンスの設置を決定
2006年3月 保育施設が竣工
2006年4月 開園
2014年6月 原告である周辺住民の男性が保育施設の事業者に対して、騒音に対する精神的損害の慰謝料などを求め、神戸地方裁判所に提訴
2017年2月 神戸地裁は保育施設からの音が「一般生活上、受忍すべき限度を超えていない」と判断。原告男性の訴えを棄却。男性は大阪高等裁判所に控訴
2017年4月大阪高裁が1審を支持し、原告男性の控訴を棄却
2017年12月最高裁判所が上告を退け、原告男性の敗訴が確定
〔図1〕開園前に騒音対策を重ねた
魚崎COCOROの騒音対策と騒音を巡る訴訟の経緯。開園を1年遅らせて周辺住民との折衝を進めてきたが、一部住民の理解が得られず裁判に発展した(資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)

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