病気の兆候が隠れる健康データ、製薬企業こそ取り組むべき

2019/09/03 05:00
栗原哲也=新生キャピタルパートナーズ パートナー

 デジタルヘルスの実装化に向けて、製薬企業は何をすべきか――。今回は「組織体制」と「外部との提携」に絞り、その着眼点について解説する。組織体制では、ニーズを見つける社内をよく知る人材と、IT(情報技術)技術にたけた人材の両者を配置することが必要だ。外部との提携では、今後製薬企業は、これまで提携が進んでこなかった健康分野に取り組む企業との協業も考慮に入れるべきだと考えている。健康データにこそ病気の兆候が隠れているからだ。

専門組織に必要な人材が配置されているか?

 近年、多くの製薬企業がデジタルの専門組織を設けている。新しい領域における情報の収集や知識の集約と、それに基づく戦略の立案の面で、専門組織はデジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)には欠かせない。

 製薬企業がデジタルヘルスを活用しようとする場合、研究・開発、製造、営業・マーケティングなど各部門に存在する「ニーズ」と、その解決策となり得るデジタル技術やツールといった「シーズ」のマッチングが必要だ。マッチングがスムーズに行われて初めて実装への第一歩となる。それでは、具体的にどのような人材を専門組織に配置すべきか。

図1:理想的な組織
(出所:新生キャピタルパートナーズ)
クリックすると拡大した画像が開きます

 それは、(1)社内の様々な部門と連携して「ニーズ」を正確にすくい上げる人材と、(2) IT技術の専門知識に精通した人材だ。(1)では、各部門に対して顔が広い社内の人間が最適だ。(2)では、最先端の「シーズ」、すなわちデジタル技術を見つけ出し実装プロセスに乗せることが求められる。理想を言えば、上記両方を満たす人材が望ましい。目の前に優れた「シーズ」を見つけたとき、顕在化している「ニーズ」にぴたりと当てはまらなくても各部門の潜在的な「ニーズ」とも結び付けられるかもしれないからだ。

 これまでのところ、各社のアプローチは様々である。社内の人材を登用する企業や、外部からIT専門家を採用する企業、その混成とする企業がある。ITにたけた人材を外部から登用する場合、製薬業界の文化とのフィット感も重要となるであろう。いずれの場合においても、デジタル部門と各部門が密なコミュニケーションを図り互いの理解に努めることが重要であり、このことは全社的なITリテラシー(読み書き能力)の向上にも資するだろう。

デジタルヘルスの自社開発は現段階では難しい

 ここまで、デジタルヘルスにおける「シーズ」は外から探すことを前提に話を進めているが、自社開発は可能だろうか。広範にわたるデジタルヘルスの中のカテゴリーにもよるだろうが、一部の領域を除けば全てを自前で賄うのは難しい。

 デジタルヘルスの実用化には多かれ少なかれITエンジニアによる開発が必要となる。開発を行うには複数の種類のITエンジニアを必要とし、最先端な領域になれば扱えるエンジニアも限られてくる。そのため、製薬企業が社内にITエンジニアを配置し自社開発チームをつくるという判断は現時点では難しい。

 これまで外部ベンダーを活用して製品のウェブサイトや疾患管理のためのアプリが開発されてきたように、ベンダーとともにデジタルツールを自社開発していくことは可能だろう。ただし、これまで以上にコンテンツ設計やデザインがおろそかにならないように注意を払わなければならない。例えば、アプリの開発には患者目線、医療従事者目線でのコンテンツ作成やユーザビリティが必須であり、外部に開発を発注するというよりは製薬企業とベンダーによる協働が求められる。

この先は日経 xTECH登録会員(無料)の登録が必要です。

お知らせ

ピックアップPR

もっと見る

記事ランキング