トヨタ自動車が驚きの決算を発表した。2019年度上期(2019年4~9月)の連結売上高は、この大変な経済状況の中、前年度同期比4.2%増の15兆2856億円だった。絶対額で6115億円も増えているのに、もともとの売上高が大きくて比率だと数%しか伸びていない計算になることに卒倒してしまう。営業利益の伸び率はさらに大きく、同11.3%増の1兆4043億円だった。

 これはあくまで上期まで、つまり消費増税前の数字だから、これから同社がどうなるかは分からない。とはいえ立派な数字だろう。

 このトヨタと対照的だったのが、サプライヤー各社の決算だ。例えば、アイシン精機の2019年度上期連結決算は、売上高が前年度同期比4.0%減の1兆9137億円、営業利益が同56.5%減の534億円だった。特に利益の落ち込みが激しい。デンソーも、同期間の売上高は同0.2%減の2兆6184億円と前年度並みを維持したが、営業利益は同12.0減の1340億円とやはり大幅に減少している。

(出所:PIXTA)

 このような結果を受けて各メディアは、「トヨタ独り勝ち、系列サプライヤーは減益」と報じた。中には、サプライヤーの犠牲の下にトヨタが利益を上げているとの指摘も見られた。

「今期は厳しい」はあり得ない

 私は自動車産業に身を置いてきた。中でも自動車メーカーの調達部門が長い。その当時から、「今期は自動車メーカーによる値引き要請が激しく、サプライヤーの決算が厳しかった」というような報道を見るたびに違和感を抱いた。きっと、現在自動車メーカーの調達部門で働く方々も同じように思っているはずだ。

 なぜなら、「前期は優しく、今期は厳しい」ということは無いからだ。自動車産業は常に競争にさらされており、あえていえば「常に厳しい」。1つ前の文章には最後に(笑)と、付けるべきかもしれない。だいたい、本当に取引先の調達部門の態度いかんで利益が増減するならば、それを見込んで事業計画を立てるべきだろう。

 では、アイシン精機やデンソーは本当にトヨタの“犠牲”になったのだろうか。それを調べるために、アイシン精機やデンソーの決算説明資料を詳細に見てみた。

 アイシン精機は2019年度上期連結決算における営業減益の要因について、「売り上げの減少、先行投資にかかる償却費の増加など」と説明している。だが、トヨタグループへの売り上げは伸びていることが分かる。具体的には、2018年度上期は1兆1242億円だったが、2019年度上期は1兆1962億円に増えている。トヨタグループへの売り上げが全体に占める割合も56.4%から62.5%に拡大した。一方、トヨタグループ以外への売り上げは、8100億円から6545億円に減少した。その主な理由は、中国の民族系自動車メーカー向けが大幅に減少したことだという。「トヨタの犠牲になった」と報じたメディアの記者氏は、この決算発表資料を読んだのだろうか。

 デンソーも同様の傾向が見られる。トヨタグループへの売り上げは2018年度上期は1兆1952億円だったが、2019年度上期は1兆2544億円に増えた。一方、トヨタグループ以外への売り上げは1兆1307億円から1兆651億円と減少した。トヨタグループ以外の売り上げが減った理由や全体的に減益となった理由について、デンソーは「中国」とは書いていないものの、大半はアジアにあったとしている。

 トヨタは海外でも売上高や販売台数を伸ばした。つまり、トヨタと系列サプライヤーの差は、海外における状況がそのまま表れたものと考えられる。

利益額だけではないトヨタの強み

 ちなみに、私は自動車産業にいたためか、「営業コスト」なる指標で自動車メーカー各社を眺めている。具体的には売上高から営業利益を引いたもの、あるいは売上原価と販管費を足したものとも言い換えられる。

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