この前、韓国旅行に行ってきた女性と話をした。報道では、日本と韓国の間に嫌悪感情が広がっているといわれる。しかし、その女性はそんなことを韓国内で全く感じなかったという。良くも悪くも、大衆はそんなことを感じて生きてはいない。

 どこの国でも大衆は生きるので精いっぱいで、他国を嫌悪する余裕も趣味もない。街中を歩いていても、普通の生活があるだけだ。そしてどの国のお客であっても、売り上げになるのであれば問わない。

 考えてみれば、私だって普段の生活の中で他国を意識することはない。国内の政治家であればニュースになる。憎悪は常に内側に向かう。そうだとすれば、韓国民はむしろ韓国内の政権に不満が鬱積しているはずだ。

 その女性が「韓国人から聞いたんだけど」という前置きで、面白いことを教えてくれた。韓国内に複数の世論調査がある。その幾つかは、韓国の政権への支持率がまだそれなりの水準にある。しかし、実際には電話調査で留守番電話だった場合、「政権支持」とカウントするのだという。今はスマートフォンでの通話が大半だから、家庭の固定電話はほとんど留守電になるだろう。「だったら、政権の支持率=留守電率か」と私は笑った。この真偽は分からない。そしてその真偽も趣旨ではない。本稿の趣旨は、それが本当かもしれないと思わせる韓国の状況にある。

韓国経済の惨状

 先日、韓国が発表した輸出統計はちょっとした衝撃だった。輸出額の落ち込みの激しさがかなりのものだったからである。対象は2019年1~9月。日本からのフッ化水素などの輸入が難しくなった時期も重なるとはいえ、その影響は8月以降に限られるので、大半はそもそもの産業の落ち込みによるものと思ってよい。

半導体:前年同期比25.3%減
石油製品:前年同期比11.0%減
平板ディスプレー・センサー:前年同期比15.5%減
合成樹脂:前年同期比12.5%減
無線通信機器:前年同期比21.7%減
(出典:日本貿易振興機「日本産半導体製造装置の輸入は減少、半導体主要材料2品目は増加」)

 産業の状況が非常に厳しいといえる。「日本がフッ化水素、フッ化ポリイミド、レジストを売らなくなったからだ」と言いたい気持ちにもなるだろう。しかし、落ち込みの原因は中国向けが減少したことだ。韓国は、日本をダシにして国内世論を対日問題に向けようとしているようにすら見える。その効果はそれなりにあるようで、実際に、韓国からの観光客が激減している。

関連記事:韓国の「ホワイト国」除外は妥当も、「怨念」が日本の部材産業を襲う

 韓国は、前出の3品目(フッ化水素、フッ化ポリイミド、レジスト)について、日本の対応がWTO(世界貿易機構)協定違反だと提訴した。韓国側はこの紛争解決に2年ぐらいかかると知っているはずで(空気圧バルブの案件では3年以上かかっている)、どちらかといえば国内外へのアピールの意味合いが大きい。そもそも、WTOは駆け込み寺ではなく、2国間の協議を前提としている。ただし、協議が進展しなければ審理となる。決着が付かなければ裁判のように、最終審に至る。

(出所:PIXTA)

 韓国は1人当たりGDP(国内総生産)が増加し、「K-POP」などの文化面からも、日本をもはや超えていると信じられていた節がある。日本から材料が調達できなかっただけで生産が停止してしまう「不都合な」事実は受け入れられなかったに違いない。

 日本は素材や部品が得意で、その原材料は中国や中東に依存している。そして、商品を企画するのは欧米で、それを組み立てるのは中国やアジアである。韓国は、サムスン電子(Samsung Electronics)、LG電子(LG Electronics)、現代自動車(Hyundai Motor)といった企業はあるものの、どの分野でも世界一の立場を確保できずに呻吟(しんぎん)している。

韓国に対する疑問

 当然ながら、日韓共に、相手国に致命的なダメージを与えようとは思っていない。とはいえ、元徴用工問題に端を発した3品目の輸出入問題はさらに拡大するのだろうか。

この先は会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)が12月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら