先日、日経 xTECHに掲載された富士通・時田隆仁社長のインタビューは衝撃的だった。伝統的大企業のトップの口から、大盤振る舞いの発言が飛び出した。若手でも優秀な人材には、「年収は3000万~4000万円」に達することもあり得る制度を構築する運びだという。命運を握るような人材の場合は、市場価値と比較しながら、これまでにはあり得ない処遇を宣言した。

 このところ、類似の“ニュース”が相次いでいる。NECも先日の発表によると、優秀な新卒社員には年収1000万円を超える制度を導入するようだ。

 有名企業では、他にユニクロなどを抱えるファーストリテイリングが挙げられる。前出の2社ほどではないが、初任給を2割引き上げると発表した。具体的には約25万円で、同業他社よりも高い水準だ。ソニーも新卒に最大で年収730万円を払う方針だ。

 NECは、これからの産業の要である、人工知能などの先端領域で、人材を確保するためだとしている。人材獲得のため日系企業も報酬を上げることによって優秀な人材に訴求しようとしている。

 しかし、これらも先行するハイテク外資企業に比べると、今さら感がなくはない。

 昨今、多くの人を驚かせたのは、外資企業の高給ぶりだった。米フェイスブック(Facebook)が従業員に払う報酬の中央値は24万米ドル(約2640万円)だと報じられた。米ツイッター(Twitter)は16万米ドル(約1760万円)だ。さらにインド工科大学などの優秀な学生は、欧米のIT企業に年収1500万円前後で引き抜かれるため、日系企業は「採用負け」している。

 他にも、中国の華為技術(ファーウェイ)は初任給を40万円払うとして話題になっていたし、さらに同社は新卒に限らず優秀な社員には3000万円まで支払うとしていた。

 私は冒頭で、日本の有名な企業を紹介した。ただ、逆説的にいえば、日本では珍しいからニュースになっている、ともいえる。多くの企業はいまだに、人材獲得のために多額の初任給や報酬を払うには至っていない。実際にデータを見てみると、日系企業の初任給の平均は21万円ほどで、これは約10年間ほとんど変わっていない。

1人当たりで1990年代より低い日本人の給与

 そこで、過去の給与推移を見てみよう。下のグラフは1年を通じて勤務した給与所得者の年間平均給与を示している。

1年を通じて勤務した人の年間平均給与(出所:国税庁「民間給与実態統計調査結果」)
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 これを見ると、最近では上がっているともいえるが、それでもなお、1990年代と比べても残念な水準にあると分かる。ところで、ここで、本来ならば男女の差や、正規と非正規の差、ならびにその比率を考慮する必要がある。しかし、事実として、ここではあえて1人当たりの平均値が下がっている事実に注目したい。

 さらに、全体の傾向だけではなく、読者の属性に近い職種で、海外と比較してみよう。

主要な都市における製造業のエンジニアおよび中間管理職の月額給与比較(国際貿易振興機構「投資コスト比較」のデータに基づいて筆者作成)
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 国際比較をする関係上米ドルベースとなっている。為替の問題や、あるいは社会保障の細かな制度の違いがある。従って、単純に結論を出すのは避けるべきだろう。しかしながら、傾向は分かるはずだ。

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