「世の中には、2通りの会社があります。自社サーバーにハッキングされた会社。そして、ハッキングされたことに気づかない会社です」。演台の講師がそういうと、会場は笑いに包まれた。もちろん、その笑いは自虐的なものだった。

 先日、このところ話題になっているサイバーセキュリティーの講座を受講した。現在は、データが次世代の石油といわれ、企業は大量のデータを扱うようになった。そのデータは、サーバーやクラウド上に置いておく。すると、必然的にクラッキングの危険性が高まる。

 さらに自社のサーバーが1カ所にしかなかったらどうなるか。そこが被災してしまうとどうしようもない。バックアップを定期的に講じても、そのバックアップ自体が被災してしまうかもしれない。

 データのリスクマネジメント意識は高まっている。それは、データではなく、モノでも同じだ。

 私は調達・購買業務のコンサルティングに従業している。日本では大震災や大雨の被害を受けるので、災害のたびに話題となるのは調達先の分散だ。リスクマネジメントの一環として取引先を地理的に2社に分けておく。1社が被災しても、もう1社が残っていれば生産を続けられる。これを複数社購買、あるいはマルチソース化と呼ぶ。

 マルチソース化には2通りの手法がある。1つは、普段から発注比率を「A社7割、B社3割」などと分配しておくもの。もう1つは、普段はA社から全て調達し、いざという時だけ割高であってもB社から調達できるようにしておくものだ。

 前者に関しては、一部の企業が採用する「順位分配方式」という手法もある。例えば、A社、B社、C社から相見積書を取るとする。各社が提示してきた価格が、それぞれ1億円、1億1000万円、1億2000万円だったとしよう。普通に考えれば最も安いA社への発注となるだろうが、順位分配方式では、A社、B社、C社に発注し、その比率を例えば7割、2割、1割などとする。そして、可能であればB社やC社も価格を最も安い1億円に合わせてもらう。そうすれば、コストを削減しながら、分散による安定調達も実現できる。

 この他にもさまざまな手法が考案されてきた。現場の調達部門は、災害やトラブルのたびに、安定調達の重要性を肌身に感じ、それを志向してきたからだ。

「1つの籠に卵を盛るな」

 先日の報道によると、米アップル(Apple)は、主要取引先に対して、過度な中国生産を回避するように依頼した。現在、「iPhone」「iPad」「MacBook」などにパーツを組み込む工程は大半が中国で行われているとみられる。具体的には、その最大3割を中国外に移管するように求めた。

 中国と並んで労働コストが比較的安価で、かつ人材を確保できる国といえば、インドやベトナムとなるだろう。「1つの籠に卵を盛るな」とは金融商品の分散投資についていわれる格言である。なるほど、アップルは中国というカゴに生産を盛り込みすぎたが、その反動が生じているようだ。

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