中国の華為技術(ファーウェイ)に対する米国政府の禁輸措置が話題になっている。日本企業への影響も必至だ。そんな時代に製造業のサプライチェーンに何が求められるのか。少し遠回りになるが、考察にお付き合いいただきたい。

経済効果は存在しない、のは正しいか

 数年前のことだ。あるアイドルグループが、東日本大震災の復興に向けたチャリティーライブを実施した。ただでさえ空けるのが難しい日程を調整して、何とかライブにこぎ着けた。それはそのライブの収益を少しでも、東北の未来につなげてほしかったからだ。

 そのライブが完全な成功に終わった翌日、各情報番組がそれを取り上げた。あるテレビ番組で、経済評論家がアイドルグループの震災地復興ライブの経済効果を聞かれた。司会者から質問された経済評論家は、「経済効果は無い」と答えた。

 例えば、そのライブに1万円を支払うとする。そして、さらに1万円をグッズなどの購入に充てる。さらに交通費も1万円ぐらいかかっているかもしれない。そうすると、3万円を消費したことになる。

 だが、その観客は3万円分をどこかで節約しようとするだろう。これを代替効果と呼ぶ。お金が無尽蔵にあるならまだしも、年間を通じて見れば、その3万円分を抑えるマイナス効果もどこかに波及するはずだ。だから、その経済評論家は正しく、経済効果は無いとコメントした。

 私はたまたま、その放送後に、テレビ局で別のインタビューを受けていた。スタッフは、「実は、番組に視聴者からのクレームが異常に届いているんです」と教えてくれた。前述の経済評論家コメントに対するものだった。「あのアイドルグループが、必死の思いで成功させたライブの価値が無いとはどういうことだ」というようなクレームだった。その数は確かに、異常なほどだった。

 PCの画面を見せてもらうと、そこには多くのクレームが寄せられたメールボックスが映し出されていた。更新ボタンを押すたびに、50通ほど増えていた。想像してほしい。自分のメールボックスに、全国の見知らぬ方々から、批判のメールが届く。マスを相手にするテレビ局のスタッフといえども、どれだけ耐えられるだろうか。番組スタッフは、経済評論家の発言についてどう思うか、と私に質問した。

 私は「残念ながら、その経済評論家のコメントは正しいと思います。しかし、それは正しいか、正しくないか、という客観的判断を超えています。もはや、信じたいか、信じたくないか、という価値判断の領域になっています。経済効果があるだろうと、思い込んでいる人に、何をいっても仕方がありません」と伝えた。

 正しさ、とは、良くも悪くも、さまざまな側面がある。

 そして、たとえ、根拠のないことであっても、信じる者の洗脳を解くのは困難だ。この難しさは、相手にしてみれば、私こそ違う宗教を信じているように見える点にもある。

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