認識が異なる相手に自らの主張を納得してもらうにはどうすればよいか。本特集では日経SYSTEMSの過去記事を再編集。論理的な説明で相手を説得するコツを5日間で習得しよう。

 「あの画面はこう変えたい」「この機能も追加したい」という仕様変更の要望が利用部門から挙がることは少なくない。多くの場合、こうした要望に「予算を超過するから無理だ」「このタイミングでそんなことを言われても困る」などと強く主張するのは難しい。

 そこで合理的な説明によって、相手が要望を取り下げるように促したい。そのためには、相手と認識をそろえていくことが不可欠だ。

 認識がそろっていないケースは主に二つある。一つは、要望が重大な問題を引き起こすことに相手が気付いていないケース。もう一つは、要望を出してきた相手と判断基準が異なるケースである。

相手目線の問題とその根拠を提示

 大手SIerに勤めるDさんは、前者のケースに直面した。具体的には、あるプロジェクトがテスト工程まで進んだ段階で「帳票印刷機能を追加したい」という要望を受けた。「どうしても必要な機能が見つかった。なんとしても加えてほしい」と利用部門のキーパーソンは話したという。

 大きな手戻りが発生するため、応じることはできない。しかも、業務のやり方を工夫すれば、帳票印刷機能がなくても大きな支障が生じることなく業務を行えそうだった。

 しかし利用部門のキーパーソンは、是が非でもという様子だったので、うまく説得しないと余計に態度を硬化させる危険性があった。

 そこでDさんは、まず利用部門にとって痛みが分かりやすいコストの問題を説明した。「開発期間が延び、コスト削減の目標を達成できなくなってしまいます」といった具合だ。

要望を反映した場合の問題と、反映しない場合のリスク対策を整理
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 この主張を裏付けるため、Dさんは2つの根拠を提示した。1つは、稼働が遅れる分、既存システムの運用保守契約を延長することになり、予算外のコストが発生すること。もう1つは、開発メンバーの増員による追加コストが発生することだ。二つの根拠を提示することで、「確かに、コスト削減を達成できなくなったら本末転倒だ」という声を相手から引き出した。

次期の開発に盛り込むことを提案

 相手にとっての問題についての認識を共有した上で、Dさんは論理的な説明で相手が抱いている恐れを解消する作業に取りかかった。

 その恐れとは、「帳票印刷機能の要望が受け入れられないと業務が回らない(に違いない)」というもの。これに対して「機能を追加しなくても業務に大きな問題は発生しない」という主張を展開する。

 この主張の根拠は、新システムがCSVファイルの出力機能を備えていること。データをCSV形式で取得できるため、表計算ソフトを操作する手間はかかるが、帳票を作成できる。

 ただし、この根拠だけでは「以前より作業の手間が増える。やはり開発してほしい」と抵抗される可能性もあった。そこで「次期開発の要件に盛り込みましょう」という提案をDさんは加えた。「少し待てば不便な状態を解消できる」という安心感を利用部門のキーパーソンにもたらしたわけだ。一連の論理的な説得によって、Dさんはキーパーソンの納得を得たという。