トヨタ自動車が2019年5月に発売した新型のスポーツカー「スープラ」は、ドイツBMWと共同で開発した車両だ(図1)。プラットフォームの開発では、ドイツ・ポルシェ(Porsche)の車両運動性能と肩を並べることを目指してこだわるなど、力を注いだ。スープラの開発でチーフエンジニアを務めたトヨタGR開発統括部の多田哲哉氏の話を基に、トヨタとBMWが取り組んだ共同開発の内側を見ていこう(図2)。

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図1 トヨタ「スープラ」
フロントビュー(左)とリアビュー(右)。(撮影:日経Automotive)
図2 トヨタGR開発統括部の多田哲哉氏
(撮影:日経Automotive)
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試作車をつくって性能を確認

 共同開発の当初から、トヨタはクーペタイプ、BMWはオープンタイプを念頭に考えていた。そこで両社はプラットフォームの開発に当たり、ポルシェの車両を目標として定めた。世界で誰もが認めるスポーツカーであるクーペタイプの「ケイマン」とオープンタイプの「ボクスター」だった。

 プラットフォームの開発では、運動性能にこだわった。スポーツカーの運動性能は、ホイールベース、トレッド、重心高の3つの要素が大きく影響する。

 ホイールベースとトレッドの値を決めるのに際して、ホイールベースとトレッドの比率に焦点を当てた。操縦安定性がいいといわれる車のホイールベースとトレッドの比率を比較したところ、ドイツのポルシェ「911」が当時のモデルで1.6だったことから、この数値を上回る1.5を目標値に設定した(図3)。

図3 世界のスポーツカーのホイールベースとトレッドの比率を比較
ホイールベースとトレッドの比率はスープラが1.55。2019年7月にポルシェが発売する予定の新型「911」は約1.54で、ほぼ近い値となっていた。(撮影:日経Automotive)
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 走行の安定性を考えると、できるだけトレッドを広げてホイールベースを短くしたい。だが、実用的なサイズには限界がある。そこで、日本、北米、欧州の道幅などを考慮することにした。全幅が1900mmに達してしまうと、北米以外では売ることができないとの判断から、全幅を1865mmとしてトレッドの幅を約1600mmに決めた。

 目標とするホイールベース、トレッド、重心高といったディメンションを決めた後、本当に最適なのかを確認するために試験車を作製した。トヨタの場合、大幅にディメンションを変更する際には、必ず試作車を作製して走行テストを行っている。今回の新型スープラの場合も試作車を用意して確認することにしていた。

 試作車のベースとしたのは、BMWの2シリーズだった。ボディーを切断してホイールベースを調整したり、重量を調整するために不要な部材を取り外したりもした。車高や重心高を合わせるために、ルーフをカットした他、剛性が必要な部分にはカーボンの部材を作製して取り付けるなど、徹底的に想定する仕様で試験車をつくり込んだ。

 ちなみに、スープラの最上位モデル「RZ」と、競合車として名が挙がったポルシェ「718ケイマン」のスペックを比べると、ベンチマークしていたことが分かる。

 スープラ「RZ」のボディーの大きさは、全長4380×全幅1865×全高1290mm。ホイールベースは2470mmだ。排気量3Lの直列6気筒ターボエンジンを搭載。FR(前部エンジン・後輪駆動)。最高出力は250kW、最大トルクは500N・m。

 他方、ポルシェ「718ケイマン」のボディーの大きさは、全長4385×全幅1800mm、全高1295mm。ホイールベースは2475mmだ。排気量2Lの水平対向4気筒ターボエンジンを搭載。駆動方式はMR(中央エンジン・後輪駆動)。最高出力は220kW、最大トルクは380N・m。

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