家畜の体調管理は畜産や酪農農家の基本だ。ただし相手は生き物であり、工業製品のような品質管理は難しい。そんな課題をIoT(インターネット・オブ・シングズ)とAI(人工知能)で解消する動きが広がっている。日経コンピュータ2018年10月25日号特集「畜産テック AIとIoTで激変する牧場経営」に最新情報を加え再編集しました。

 鹿児島県曽於(そお)市。鹿児島空港から南東に車で1時間半ほど走った先にある、全国でも有数の和牛産地だ。和牛の繁殖農家を営むだいちの牛舎では、50頭ほどの黒毛和牛が思い思いに餌を食べたり寝転んだりしている。

 実はこの牛たち、1頭1頭がインターネットにつながっている。IoTとクラウドから成る「牛群管理システム」を使って、牛の個体情報や従業員の作業記録を一元管理している。

 牛の状態を知るのに使っているのがIoT端末の「Farmnote Color」。牛の首に取り付ける。北海道生まれのベンチャー企業ファームノートが提供する製品だ。水平、垂直、奥行きと3軸の加速度センサーを内蔵し、牛の動きや反芻(はんすう)と呼ぶそしゃくと消化を繰り返す行為、休息などの様子を検知する。AIが個体ごとに行動パターンを学習して、発情の兆候や病気などの異常を農家に知らせる。農家の従業員はスマートフォンやPCから情報を参照したり更新したりできる。

AIが学習して牛の発情などを知らせる
ファームノートが提供する牛群管理システム (画像提供:ファームノート)
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写真 タブレットで作業履歴や牛の状態を閲覧している様子

 だいちがFarmnote Colorを試験導入したのは2018年8月のことだ。狙いは「長年の勘と経験に頼ってきた作業を、データと照らし合わせて効率化する」(上岡義孝社長)ことにある。「黒毛和牛はデリケートな品種であり、飼育には特有の難しさがある」(同)。牛の健康状態を見える化して、体調の変化をいち早くつかみ、きめ細かい管理を可能にする。

微弱な発情の兆候も検知

 だいちは母牛に産ませた子牛を売って収益を得る繁殖農家だ。効率的に繁殖させるには発情を見逃さずに種付けをすることが重要になる。牛が発情を迎える周期は平均21日で、一度機会を逃せば次は3週間ほど待たなければならない。相手は生き物だけに、周期がずれることもある。

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