2019年、牛や豚、鶏を飼育する農家をAI(人工知能)やクラウドといったITで支援する「畜産テック」が加速している。ベンチャー企業から大手企業まで相次いで参入。IoT(インターネット・オブ・シングズ)を使った狩猟わなや流通経路を把握するシステムの導入によって、シカやイノシシなど野生動物を食肉として使うジビエの普及も進みそうだ。

 センサーやAIを使って家畜の体調管理を支援する――。そんな酪農・畜産農家向けのサービスを、リコー子会社で産業向け事業を手掛けるリコーインダストリアルソリューションズが2019年夏にも始める。NTTデータと日本ハムなどは養豚場の運営をITで効率化する「スマート養豚プロジェクト」を2018年末から進行中だ。富士通は長野市と野生動物の捕獲や処理に関する情報を管理するシステムを開発。2019年7月から同市のジビエ加工センターで本格稼働する。

(出所:PIXTA)
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 大手企業が続々と畜産テックに参入する背景には、農業従事者の高齢化や後継者不足で苦しむ農家の厳しい現状がある。農林水産省によれば2018年は乳用牛、肉用牛、豚、採卵鶏を飼育する農家の数が北海道から沖縄まで全ての地域で前年よりも約4~6%減少した。さらに畜産には野生生物によってもたらされる家畜の感染症による被害などのリスクも伴う。こうした課題を解決し、効率的な運営による食肉の安定した国内供給を実現する手段として畜産テックへの期待が高まっている。

牛・豚・鶏それぞれで進むIT活用

 リコーインダストリアルソリューションズは牛に取り付ける首輪型のIoT端末と専用のアプリで構成する牛群管理システム「RICOH CowTalk」を2019年夏にも販売する。端末内の加速度センサーが牛の動きを検知してデータをクラウドに転送。AIで分析して体調の変化や発情の兆候を農家に知らせる。

牧場の牛を24時間見える化
「RICOH CowTalk」の概要。センサーの写真は開発中のもの(出所:リコーインダストリアルソリューションズ)
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 農家が牛1頭の飼育に割ける時間は限られている。売り上げを確保するには一定数以上の家畜が必要だが、飼育頭数が増えれば管理の負担も増える。RICOH CowTalkは牛の状態を24時間自動で監視するため、飼育頭数が増えても異常や発情を見落とすリスクを減らせる。農家は見回りなどの時間を効率的に使えるようになる。

 2019年4月には動物用医薬品の製造などを手掛ける日本全薬工業と協業した。同社の販売網や獣医学の知見を活用して顧客を開拓する狙いだ。同分野ではベンチャー企業のファームノートやデザミスが先行しているが、リコーインダストリアルソリューションズは複合機ビジネスなどで培った大容量データの加工や通信の技術を生かして差異化を図る。

 同社によれば既存の製品は牛舎にデータ通信用の中継器の設置工事などが必要となる場合が多く、初期費用がかさむため導入の妨げとなっていた。RICOH CowTalkは端末内でデータを圧縮したり加工したりして通信負荷を下げることで、牛舎への中継器の設置を不要にした。農家の自宅や事務所のコンセントに小型の中継器をつなぐだけで半径1キロメートルの範囲をカバーできるという。

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