総務省は、2年契約を前提とした割引サービスの違約金上限を1000円に、通信サービスの継続利用を条件としない端末値引きの上限を2万円にするという「モバイル市場の競争促進に向けた制度整備」の案を公表した。同日に実施された有識者会議では、その内容に関して疑問や異論が噴出。総務省側の強引さが目立つ内容となっており、この案がそのまま通ってしまえば携帯電話市場の大混乱は必至だ。

「違約金1000円」「端末割引2万円」に有識者から異論

 去る2019年6月18日、総務省は携帯電話市場の競争環境を整備するための有識者会議、「モバイル市場の競争環境に関する研究会」の第15回会合を実施した。そこで公表された「モバイル市場の競争促進に向けた制度整備(案)」と、会議での議論の内容が大きな波紋を呼んでいる。

2019年6月18日に実施された「モバイル市場の競争環境に関する研究会」の第15回会合。そこで公表された「モバイル市場の競争促進に向けた制度整備(案)」に関して有識者から多くの疑問の声が上がるなど、これまでにない展開となった。写真は同会合より(筆者撮影)
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 この制度案は、既に国会を通過し2019年秋に施行される予定の電気通信事業法の改正に基づいており、主に「通信料金の割引、端末代金の値引き等の禁止」と「行き過ぎた囲い込みの禁止」に関するものだ。

 このうち前者は、従来のように端末代金を大幅に値引き、その値引き分を毎月の通信料金から回収することを禁止し、通信料金と端末代金を明確に分ける「分離プラン」の導入を義務化する。この点については同有識者会議でも長きにわたって議論が進められており、NTTドコモが2019年6月より「ギガホ」「ギガライト」で分離プランを導入するなど、携帯電話各社が先んじて対応を進めてきた。

 今回、大きな波紋を呼んだのは後者についてである。これは、2年間の契約を前提として通信料金を割り引く「2年縛り」や、4年間など長期間の割賦を組んで端末を購入し、一定期間後に買い替えると割賦残債の支払いが不要になる「4年縛り」と呼ばれるサービスに制約を設けるというもの。ユーザーが特定の携帯電話事業者に長期間縛られることなく、乗り換えやすくするのが目的だ。

 今回の制度案では、2年縛りに関しては中途解約時の解除料上限を1000円にするよう明記されており、現在の一般的な額である9500円と比べ約10分の1に引き下げられている。また通信サービスの継続利用を条件としない端末購入の値引き額も、2万円を超えるものは原則として禁止する(いくつかの例外あり)など、かなり少ない額に抑えられている。

「モバイル市場の競争促進に向けた制度整備(案)」より。行き過ぎた期間拘束の是正のため、2年契約期間内での通信契約解除時の違約金上限は、現在の約10分の1の水準となる1000円を上限にするという
(出所:総務省)
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 だがその内容に関して、会合に参加した構成員からは、結果的に賛同したとはいえ、「違約金上限1000円とか、値引き上限2万円というプロセスには大いに疑問がある」(野村総合研究所 パートナーの北俊一氏)、「2万円、1000円という額が合理的か、行き過ぎかを明らかにする検討は、時間が足りなかったことを含め十分ではない」(慶応義塾大学大学院特任准教授の黒坂達也氏)など、疑問の声が相次いでいる。筆者も過去にこの有識者会議を何度か傍聴しているのだが、総務省の提示案に構成員からここまでの疑問や異論が湧き上がる様子は見たことがない。