磯崎新氏へのプリツカー建築賞授与式が本日2019年5月24日に行われる。海外の建築界に詳しい4人の専門家に「日本建築界の見え方」を聞くこのシリーズ。ラストバッターは、中国の建築界に詳しい若手建築史家の市川紘司氏(1985年生まれ、明治大学助教)だ。

市川紘司(いちかわ・こうじ)氏。1985年生まれ。2008年横浜国立大学工学部建設学科卒業。東北大学大学院工学研究科博士課程に在籍中、中国・北京の清華大学建築学院に留学。17年東北大学大学院博士課程修了。18年より明治大学理工学部建築学科助教。専門はアジア、特に中華圏の建築と都市の歴史(写真:岡本 雄大)
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 外交関係に波はあっても、中国の建築関係者は日本の建築文化やデザインを一貫して評価し、好感を持っている。安藤忠雄さんや伊東豊雄さん、隈研吾さん、SANAAなどの本を読んだり建物を見たりといったことに熱心な人は多い。

 また、そうしたスターアーキテクトよりも一般の人々に人気のある、青山周平さんのような日本人建築家もいる。1980年生まれ、東京大学大学院を出た後、北京を拠点とする青山さんは、中国版「劇的ビフォーアフター」とも言えるテレビ番組に出演し、狭小住宅に暮らす家族のために細やかな設計でリノベーションを行い、一躍有名になった。青山さんは日本的な建築デザインや生活に対する考え方を、長く暮らした北京の胡同(フートン)エリアの空間の感覚を交えながら、中国市場で草の根に展開して、驚くほどの人気を得ている。他の国にはあまり見られない現象だろう。

 中国の人々は一般的に、日本的なデザインの細やかさを高く評価し、日本の建築家がつくるものは洗練されていて、空間に親密感があるというイメージを持っている。クライアントがそのようなイメージを自分の建物に持たせたいとなると、日本の建築家が設計することが重要になり、それが1つのブランドにもなる。

 私も中国に留学していたときの知り合いを通じて「日本の建築家を紹介してほしい」と頼まれることがある。そのときの「日本の建築家」は、「日本に事務所を構え、日本の建築文化を解して設計できる建築家」のこと。必ずしもスターアーキテクトが望まれているわけではない。ただ、日本人であっても中国を拠点としている建築家は、逆にあまり好まれないことがあるのが興味深い。

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